緊張の瞬間 ページ23
.
授業前の休み時間、俺は迷っていた。
文字を打っては消してを繰り返し、指がスマホの画面の上を彷徨っている。
『来週の火曜、僕と遊園地に行きませんか？』
もう一度その言葉を打つ。
俺が送ろうとしている相手はもちろんAさんである。
ただ勇気が出なくて送れず、俺の手は緊張で微かに震えていた。
.
有河 「…り、勝利！」
勝利 「うわ！びっくりした…」
有河 「さっきからずっと呼んでるのに全然気がつかないんだもん」
勝利 「ごめんごめん、って…あー！」
有河 「えー！何！」
.
俺の声に今度は桜の方がびっくりしている。
桜を認識した後再びスマホの画面に視線を落とすとさっき散々送るか悩んでいたメッセージはAさんに送信されてしまっていた。
さっき桜に名前を呼ばれて驚いた拍子に送信ボタンを押してしまったのだろう。
慌てて送信を取り消そうと思ったのにそれよりも先にメッセージの横に既読の文字がついてしまった。
今日は火曜日。お店も定休日だからスマホを手元に持っていたのかもしれない。
.
勝利 「送ってしまった……」
有河 「何？どうしたの？」
勝利 「あ、いやその、好きな人に僕と遊園地行きませんか？って送ってしまいました...」
有河 「えー！勝利が一歩前進してる！返事は！？」
勝利 「まだだけど、既読ついたからすぐ返ってくるかも…あ、」
有河 「返ってきた？」
勝利 「一緒に行こう、だって」
有河 「おー良かったじゃん勝利！」
.
心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのが分かる。
良かった、断られなくて。
ほっと胸を撫で下ろすと安心感と緊張感が同時に襲ってきた。
.
有河 「ねえ、風磨くんにも話していい？この事」
勝利 「うん、いいよ」
まだ進展はしていないけど、風磨先輩には色々と相談に乗ってもらっているので俺はそれを承諾した。
それと同時に俺はある決心をした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 88人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜彩 | 作成日時：2022年11月1日 23時
