演劇のチケット ページ14
.
俺はこの夏休み、常連見習いから常連へと進級した。
Aさんも俺がほぼ毎日カウンター席に座っている事に驚かなくなった。
.
「勝利くんって毎回お店が暇な時間帯に来るよね」
勝利 「だってそうじゃないとカウンター席座れないじゃないですか」
「別にカウンター席じゃなくても良いでしょ(笑)」
.
Aさんと喋りたいからカウンター席に座りたいんです、って言ったらどんな反応するかな。
ここはスナックじゃないいんだから、なんて怒られちゃうかな。
.
「あ、そーだ」
勝利 「何ですか?」
「最近勝利くんとよく会うからか分かんないけど、昨日夢の中に勝利くん出てきたんだよね」
勝利 「僕ですか?」
「何の夢だっけなー。内容が思い出せないんだよね」
勝利 「え、気になるじゃないですか」
.
Aさんは頑張って思い出そうとしていたけれど、結局思い出せなかったようだ。
勝利 「悪い夢じゃないと良いんですけど」
「悪い夢では……うん、なかったはず」
勝利 「なら良いんですけど」
夢の中とはいえ、印象が悪くなっちゃ困る。
どうか良い夢であってくれ、と俺は願った。
.
「あ、そーだ」
勝利 「今度は何ですか?」
「勝利くん演劇興味ある?」
勝利 「演劇?」
そう言ってAさんがエプロンのポケットから取り出したのは2枚のチケット。
「2枚手に入ったから良かったら一緒にどうかなーって思ったんだけど」
勝利 「僕で良いんですか?」
「良いから誘ってるんじゃん」
.
嬉しかった。僕の事を誘ってくれて。
そこに何の意味もなかったとしても純粋に嬉しかった。
.
88人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜彩 | 作成日時:2022年11月1日 23時