そして僕等は (ページ17)

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穏やかな日々ページ17

「せんせーっ！またあれやって～」

「私ももう一度見たいです!」

女学生達が教師の周りに集まっている。

「わかった、わかったからっ、ちょっーと離れてくれる?」

苦笑いしつつ対応する。『あれ』というのは炎を使った呪文、メラの類いのことである。

「でも、危ないから。皆下がってて!……いくわよ、はぁぁぁっ！」

燃え盛る炎が現れると、生徒達から歓声が上がる。もちろん、危険なのでその炎を何処かに放つことはしない。

「すごーい!!あたしも、せんせーみたいにまほう使えるかな?」

きらきらと目を輝かせながら話す少女。その頭を撫でながら教師は続ける。

「ええ、きっと出来るわ。但し、しっかり勉強と練習したらね!」

「うん！あたしがんばる！」

「ええ、頑張ってね!あ、ほら。もうすぐ空が暗くなるわ。早く部屋に戻らなきゃ。」

教師に挨拶をして女学生達は部屋へと戻っていく。生徒達を見届けた後、帰宅の準備の為に校舎へと歩き出した。すると聞き覚えのある足音が後ろから聞こえてきた。

「相変わらず凄い人気ですね、お姉さま。」

「あら、セーニャ。丁度帰る支度をしようと思っていた所なの。一緒に帰らない?」

もちろん、と嬉しそうに返事をする。ふとセーニャの手元を見る。

「それ、ダーハルーネのケーキでしょ」

そう言われると、ばつが悪そうに下を向いてしまった。

「食べ過ぎるのは良くないと分かっているのですが……その、凄く美味しくて。」

なんとそのケーキは二時間も並んで買った物だという。

用事を済ませ、二人は馬車に乗り帰宅する。セーニャはお目当てのケーキを買えて満足そうだ。

「し、幸せですわ～♪あ、聞いて下さいお姉さま!ケーキを一つサービスして下さったんです!良かったらお姉さまも食べませんか?」

「そうね……せっかくだし貰おうかしら。てか、本当に幸せそうな顔するわね、アンタ。」

『はい～』とケーキの入った箱をいとおしそうに抱える。すると今度は自分はどうなのか、と聞かれる。

「幸せよ。夢だった魔法教師になれたし。……それに、皆と一緒にこの世界を生きる事が出来てるんだもの。」

馬車が丁度くぼみを通ったらしく、ガタガタと音を立てる。

「今、なんて……?」

「何でもないわ。ただ、普通がこんなにも幸せなんだなって思ったの。」

「お姉さま……」

馬車が止まった。どうやらラムダに着いたようだ。軽く伸びをしてから、長い階段を登る。

「ただいま！」

そう言える喜びを噛み締めていた。