忘れてしまう君に幸せを【zm】 (ページ16)

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A視線

sn「検査お疲れ様。疲れたやろ？ここ座ってええで。」

そう言って先程座っていた椅子とは
別の椅子に座らせてくれる。

私の前には茶色い大きな封筒が置いてある。

ペ神は静かに今の状況を説明し始めた。

sn「Aちゃんもゾムも落ち着いて聞いて欲しい。今Aはアイルーズン症候群の可能性が高い。」

「…アイルーズン症候群？」

sn「せや。症状は若年性アルツハイマー病と同じで、記憶障害や記憶力の低下、判断力の低下が見られんねん。」

zm「じゃあ何が違うねん。」

ペ神は少し声のトーンを落とした。

sn「世界規模で見ても稀な病気や。アルツハイマーは今確実やないけど、治療薬が出てる。でも、アイルーズン症候群には画期的な治療薬がないねん。」

「…せやったらもう治ることは無いん？」

sn「アルツハイマーの治療薬も治すための薬やなくて、あくまで進行を遅らせる薬やねん。やからどっちにしろ治る可能性はほとんどないけど、本人次第では進行を遅らせる事はできる。」

それに…と続けるペ神。

どうやら若年性アルツハイマー病も
アイルーズン症候群も
ペ神が今研究中の病状らしく、
気持ちの持ちよう次第ではいくらでも
進行を遅らせる事が証明されているみたいだ。

その言葉を聞いて少しばかりではあるが
安心したのも束の間

最後のペ神言葉は耳を疑うようなものだった。

sn「アイルーズン症候群の最大の特徴は、その人の記憶が全て消えてしまうと、その人も消えてしまう事。そして死期が近づくと透けて見えてくるねん。」

「…え、その人も消えるって…」

sn「…死んでしまうんや…」

世界が真っ黒になった。
自分が死んでしまうかもしれない。
そう思うと体がくすみ、
上手く息ができなくなる。

zm「…っ！A！」

翠が私を呼ぶ声を最後に
私の視界は暗転した。