10分間だけでいいから､俺と恋人になって｡

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目の前で悔しそうな変な顔を
する彼を前に､苦笑いを零す｡

途端温もりを感じて､抱き締め
られていると少し遅れて気付く｡



「…最新から､こうしてれば良かった」

『……そうだね』

「俺､片思いだと思ってた」



私も､と思ったけれど何となく
赤葦の言葉がまだ続きそうで
口を閉じて黙って聞いていた｡

顔は見えないけど､予想はつく｡



「1年の入学式で一目惚れして」

『…私は中学生の時からだよ』

「えっ」



腕を緩めたので顔を上げると､
何とも間抜けな顔をしている
赤葦と目がバッチリ合った｡

笑いそうになるけど､我慢する｡



『試合みたの｡赤葦がやってる所』

「……え､」

『それで私も多分､一目惚れ』



気付いたら好きになってた｡

名前も何も知らなかったけど､
同じ学校だって知って嬉しくて｡
話し掛けられた時はそりゃもう…



「……嘘､全然知らなかった」

『まぁ､言ってなかったしね』

「俺より前からだったんだ…」



尚更もっと前から言ってれば
良かった､とまた悔しそうな顔｡

多分､今が人生で一番幸せだ｡
ずっと好きだった人と気持ちが
一緒で､こうして触れ合える｡



「もう一つお願い､いい？」

『…いいよ｡なに？』



優しく微笑む､彼｡

釣られて私も笑う｡



「キスしていい？」



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