ライムグリーンのトリトリコ＿ .〈 Yabu.K 〉

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「 へ…？ 」


オカルトじみた可笑しな店を通り過ぎようとしたら、

店内から、高すぎす低すぎない
なんとも言えない独特な雰囲気を放つ声をかけられた。


前を見て後ろを振り返っても俺以外の人影はないから、
俺に声をかけたのだろうか。



『 おにーさん、この世界は生きてる心地しないんでしょう？
だったらさっさと命売っちゃいなよ。

家族なり、恋人なりに
おにーさんの命を買い取った金額渡しておくからさ。 』



「 そういう問題じゃないんだよ…。そう、もっとこう… 」



『 おにーさんの命、さっそく査定してみたけどさ、
すっごい、平凡だね。なーんだ、面白くないの。 』



俺の命に、面白い、面白くない があってたまるか…。

そもそも、命を売ったら査定した金額分渡します？
そんな馬鹿な話、誰が信じるか。有り得ない。



「 とにかく、俺はまだ死にたくないの。
普通でいいし、平凡でいい。 」


なにも取り柄なんてないし、短所も長所も自分でさえ理解していない。
それでも、理由なくても、やっぱり生きたいんだよ。



『 ……おにーさん、生きて何したいの？

なんのために生きるの？ なにがしたくて生きるの？ ねえ、なんで？ 』









そうだ、具体的に生きてしたいこと、自分でもわからない。

家族と一緒に旅行で一泊二日で旅館に泊まりたい、
恋人をつくって一緒にデートしたい、
犬を飼って休日は窓の前で一緒にゴロゴロしたい、


果たして、生きてしたい事はこんなのでいいのだろうか。




絶対に主演映画に出たいなんて願望はないし、
平凡にただただ毎日仕事して生活して、そして時期を見て引退して、それで……



それで……？





なんだか、絶望したように気怠げな感覚が自分に纒わり付く。



結局、俺は何をしたいのだろう…。



『 ほらね、おにーさん。結局何したいのか決まらないじゃん。
さっさと素直に命売っちゃいなよ。 』





もっと他にやりたいこと…ほら、あるだろ…。



思い出せよ俺……


旅行でもデートでも無い。







「 俺は、アイドルなんだ。

こんな平凡な俺に魅力を感じて、応援してくれてるファンがいるんだ。


家族旅行よりも、彼女つくってデートするよりも、犬と戯れることよりも

ずっともっとファンの子が大切。



俺はファンの子のために生きる。


これじゃ、だめか？ 」





.




『 ……驚いた。おにーさんそんな考えて出来るんだ。勿体ない……


今回は交渉不成立……やれやれ。 』

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