【d!】幽体離脱にご注意を

８話．戦いの前に ページ10

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次の日、何事も無かったかのように
訓練をし終えるとAはある場所に向かった


合同練習が行われていて廊下の人通りは少ない


いつも騒がしい軍事基地内は
嘘のように静まり返り、足音だけが虚しく響く






「失礼します」






扉をノックするが中からの返事は無く
周囲を確認して手に入れた鍵を使い中に入った

長らく使用していないのに綺麗で驚いてしまう






ト『あいつらが交代制で掃除しとるからな』


「なるほど、だからこんなに綺麗なんですね」






Aが向かった場所というのは
幽体離脱する前のトントンが使っていた部屋だ






「ぬいぐるみとか持ってるんだ、意外ですね」






ベッドの上には豚のぬいぐるみが置いてある






ト『それはグルさんからの貰いもんや』


「あの総統がぬいぐるみのプレゼントって…」






どういう経緯で豚のぬいぐるみを
贈ろうと思い立ったのか直接聞いてみたいものだ






「あれ、スリッパも豚さんじゃないですか」






豚のスリッパが扉の隅にひっそりと置かれている






ト『なんなら財布も豚さんやで』






聞いたところによると
財布もスリッパも全て幹部からの贈り物らしい






「好きなんですか？」


ト『豚が好きって言うより動物が好きやねん』






ふーん、と相槌を打って部屋の中を見回し
本来の目的を思い出して木製の机に近付いていく






「一番下の引き出しって開けていいですか？」


ト『ええよ、別に変なもん入ってへんし』






本人からの許可を頂き、引き出しを開けると
何やらポケットから高級そうな箱を取り出した






ト『それはお前が持っとけって言うたやろ』


「いえ、これはトントンさんが持つべきです」






一番下の引き出しに入れたのは
表彰式で授与された名誉勲章のメダル入りの箱

どうしてもこれをトントンに渡したかったのだ






「よし」






満足そうな顔をして
部屋を出ていこうとするがトントンが動かない






「トントンさん？」


ト『持って行ってほしいもんがあるんやけど…』






そう言って指差したのは
ぬいぐるみと机の上に置いていた一つの写真立て






「わかりました」






物を持ち出すのはリスクが高いが
トントンの気持ちを汲んで持っていくことにした


豚さんのぬいぐるみと写真立てを持ち部屋を出る


人通りが少ない時間を狙って正解だと
改めて思いながら鍵を掛け、走って自室に戻った

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