１０話．その日の夜 ページ12
．
ト『しっかり寝て明日に備えるんやで』
「はい、おやすみなさい」
いつもより早い時間に眠りにつき
それを確認して、トントンは部屋を出ていった
廊下を彷徨って総統室に入る
Aが寝たあとに
総統室に来るのがトントンの習慣になっていた
ト『お、今日も真面目に仕事してるやん』
今にも閉じてしまいそうな目で
黙々と書類整理をしているところに声をかける
当然のことだが反応はない
ト『ちゃんと寝てないやろ、隈酷いで』
トントンが幽体離脱してからは
数倍グルッペンに仕事が舞い込むようになった
それを全て一人で処理している事に感銘を受ける
ト『コーヒーなんか飲まずに寝た方がええよ』
寝るように促しても
生活習慣について注意しても一切聞こえてない
グ「ふぅ…」
疲れが溜まっていることを示すように
後半の字が乱れ、グルッペンの限界を知らせる
ト『やっと休憩か？』
ペンを置いて引き出しから写真立てを取り出した
それを覗き込めばトントンが持っていた
写真と同じもので鼻の奥がツーン、と痛くなる
グ「…トントン」
ト『なんや』
写真を指で撫でて名前を呼んだ
ト『ここに居るで、あんたの目の前に居る』
それでも尚、グルッペンは写真を見つめている
ト『顔上げてや、目の前に居るんやで』
見えないことも聞こえないことも分かってる
それでも声をかけ続けるのは
いつか認識してくれる可能性を捨てたくないから
ト『なぁ…』
手を伸ばして触れようとするが
虚しく空を切り、グルッペンの体をすり抜ける
ポタっと写真に水滴が零れ落ちて染み込んだ
グ「…仕事を終わらせなければ」
そう呟いて袖で水滴を拭うと
写真を引き出しに入れて再びペンを動かし始める
ト『泣かんといてや、俺は生きてるんやから』
鼻を啜りながらも仕事を続ける姿を見て
いつの間にかトントンの瞳から水滴が溢れ出した
ト『絶対元に戻るから』
水滴はそのまま床に落ちるが
染み込みもせず、ただ床に落ちて消えていく
ト『待っててな、戻ったら仕事手伝ったるわ』
大丈夫だと自分に言い聞かせ
水滴を拭うとグルッペンに向けて笑いかけた
ト『それじゃあお休み、ちゃんと寝るんやで』
相変わらず反応はないが
それでも満足そうに笑って手を振り部屋を出る
その時、ふいにグルッペンが顔を上げた
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るか(プロフ) - こんな神みたいな小説をありがとうございますすごく泣けました！！！！ (2022年10月26日 21時) (
レス) @page44 id: 8ee7b90455 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ - ちょっと待って！？貴方様だったんですか！？なーちゃん！？…崇めます。うちの大好きな小説の作者様だったなんて…。この小説本当に好きです！！何回も読みました…！！tn氏の小説もっとください…。←(tn氏最推しの人) (2021年6月12日 3時) (レス) id: 55536975a6 (このIDを非表示/違反報告)
moz(プロフ) - 何周目か分かんないくらい読み込んでおります…！途中ヒヤヒヤするところで心拍数がぶち上がりました。神作者様の他の作品も読んできます〜！（追記ですがこの作品によく似た作品がありました。タイトルは 幽体離脱してた件 です。気のせいだったらすみません。） (2021年1月22日 18時) (レス) id: db48de9f7d (このIDを非表示/違反報告)
ハト - 神 (2020年12月8日 3時) (レス) id: f0bbbc5cbd (このIDを非表示/違反報告)
赤月奏楽 - 完結おめでとうございます！まだ二話くらいしか出ていなかった頃にこの作品を見つけて、ふと思い出してぶっ飛んできたら完結してました。途中はどうなるかとこちらもヒヤヒヤしましたが、最高の作品でした！神様ですね。神作品をありがとうございました！ (2020年11月22日 11時) (レス) id: 0a13c144ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なんとなく
| 作成日時：2020年8月9日 17時
