ねぇ、深田くん (ページ9)

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「＿ちゃん」

深田くんから逃げてしまった日の翌日

「ねー聞こえてる？」

当たり前だけど、深田くんが追いかけてくれることはなくて。

「もしかして俺無視されてる？」

“追いかけてくれる訳がない”

なんて、分かっていたはずなのにまだ胸が痛むの

「おーい、もしもーし？」

でも…「久々やん」って言われた時、嬉しかったな。

私に気づいてくれて、声をかけてくれたことが＿

「もう！Aちゃん！！」

『へ、あっ、はい！』

「いっつも自分の世界に入ると無視するんだから」

『ごめん…』

目の前には、ぷんぷんした顔でこちらを見る黒田くん。

かなりムスーっとしてるから、結構な間無視しちゃったのかな、

…申し訳ない

黒「せっかくAちゃんの為にいい情報もってきたのにー」

ぷんすかしてると思ったら

どこか切なそうに、でも優しい顔をしてそう言うの。

黒「教えてほしい？」

『…教えてほしい』

黒「わかった、湧から聞いた話なんだけどね」

黒田くんは、ゆっくり私に話してくれた。

これは仲良しの3年の元木先輩に聞いた話で

深田くんと例のあの先輩は、恋人関係ではないとのこと。

そして先輩の名前は、綾井莉羽(あやいりう)さんと言うこと。

どうやら深田くんと綾井先輩は幼馴染で、昔からの仲。

黒「で、深田は…」

『深田くんは…？』

黒「あー、いや、間違えた、！」

いきなり焦り出す黒田くん。

そして慌てた様子でまた話し出す

黒「湧にさ、お前綾井のこと好きなの？って聞かれた、

俺があんまりにも必死で聞き出すからって。笑

…俺はAちゃんの為に聞いたのにね」

なんか黒田くん、いつもとちょっと違う

黒「ごめん、なんか色々テンパっちゃった。

とりあえず綾井先輩と深田は恋人じゃないよ、安心した？」

『あ…うん、聞いてくれてありがとう』

私が感謝を伝えれば、にっこり笑顔になってくれて。

黒「じゃ、俺行くね」

“「深田は…」” と、さっき言いかけた言葉も気になるけど

今引き止めるのは違う気がしたから、何も言わずに背中を見つめた。

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深田くんと綾井先輩は恋人じゃない…

でも、昔からの幼馴染…

『…はぁ』

私の心と同じように、教室から見える空は

どんよりとした雲に覆われている、そんな空だった

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