ねぇ、深田くん (ページ8)

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黒「Aちゃん…？」

美「ひっどい顔してるそこの人ー…うん、聞こえてない」

…聞こえてますよ

ただ返事をする気力がないだけ

美「自分から避けなければいいのに。」

『だって…』

黒「二人の関係、知るの怖い？」

図星をつかれた私は黙ったまま頷く

朝練で女の先輩と仲良さげな姿を見たあの日から

深田くんのことを避けるようになってしまった。

どうしても深田くんを見かけると

あの先輩が過ぎって苦しくなって、いつも通りでいられないから。

まあ避けると言っても、深い関係ではないから

校内で見かけたらその場を離れるくらいだけど…

美「じゃあずっと避け続けるんだ、深田のこと」

『……』

…そんなの、分かんない。

『…でも、

期待してた自分もいたんだよね…

深田くんから話しかけてくれるんじゃないかって』

私の大好きなあの笑顔で

“久しぶり、最近見かけなかった”って。

『自惚れてたなぁ…

深田くんが私の事なんて気にするはずないのに』

たった数日、好きな人を見ないようにするだけで

私は胸が苦しさでいっぱいなのに

深田くんはきっとなんとも思ってないんだよね。

『自分が勝手に避けてるのに…バカだよね』

そもそも、“見かけないな” なんて思われるわけがない。

クラスが一緒なわけでもないし、友達なのかも分からないのに。

美「深田から来てくれないって分かってるなら

もうAから勇気出して行くしかないってことじゃん」

正論すぎて、言葉に詰まった私は

『…飲み物、買ってくる』

逃げるようにその場を後にした。

心配そうに私の名前を呼ぶ黒田くんの声は、聞こえないふりをして

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『謝らないと…』

自販機で飲み物を買ってぽつり呟く。

私のためを思って言ってくれたのに、酷いことした。

嫌な奴だったな、私…

…ん？

ふと感じる、周りからの鋭い視線

振り返れば

「やっぱりAちゃんだ。久々やん」

私の好きな人。

こんな展開想像してなくて鼓動が早まる

“美琴に助言してもらったから、避けるのは終わり”

頭では分かってる、けど

「またあの女」

「なんなの」

未だに収まらない、攻撃的な言葉たち。

…怖いよ

弱い私は、また逃げる選択をした

“「Aちゃん」”

なんて言って

深田くんが追いかけてくれる訳ないのに

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