ねぇ、深田くん (ページ6)

今日:243 hit、昨日:220 hit、合計:35,118 hit

・ページ6

.

『まさか帰りの方面が同じだとは…』

深「めっちゃ驚いてたもんね」

そう言ってクスッと笑う深田くんと一緒に

電車に揺られながら会話を交わしている私。

家が同じ方面だと知ったのは、ほんの数分前。

学校から駅までの道のりで、

“俺、Aちゃんと同じ電車だわ” と言われて判明した。

深田くんに家の方面の事など話した記憶がないから

なぜ知っているのか聞けば、生徒手帳を拾って名前を確認する時に

住所も見えてしまったんだとか。

深「見るつもりなかったんだけど…勝手にごめん」

『ううん、全然大丈夫だから謝らないで』

わざとではないのに謝罪をしてくれる深田くんは

本当に優しい人なんだと思う。

『深田くんの最寄りはどこ？』

純粋に疑問に思ったことを聞くと、

深「実はね、最寄りも同じなんだよ」

予想もしていなかった返答が返ってくる

『えっ…』

最寄りまで同じだとはさすがに思わなくて

驚きのあまり言葉を失っている私を彼は楽しそうに見ていて。

深「もしかしたら同じ車両に乗ってた日もあるかも」

“ね？”だなんて私の顔を覗き込みながら言う君はずるい。

好きな人が同じ車両にいたら気づかないはずがないだろうけど、

『そうだね』

ドキドキうるさい鼓動と

最寄りが同じ嬉しさを隠すのに必死で

今の私は、こんな在り来りな返事しかできなかった。

·

深「ここ見せたくて、帰るの誘ったんだよね」

あの後、電車を降りた時に“ついてきてほしい”と言われて

最寄りの改札を出てから数十秒程で着いた場所、

そこはりんご飴専門店で。

深「前にりんごジュース好きだって言ってたから

りんご飴も好きかなって」

『りんご飴…！すっごく好き』

家の方向とは真逆にあるから、深田くんが教えてくれなければ

このお店を知ることすらきっとなかったんだろうな。

深「良かった、この前帰り道で見つけてさ。

いつAちゃんに教えようか考えてたんだよね」

好きな物を覚えてくれていたことも嬉しいけど

わざわざ私に教えようとしてくれていたなんて言われたら

胸が高鳴らないわけなくて。

『教えてくれてありがとう、本当に嬉しい』

平常心をなんとか保ちながらそう伝えれば、

“いーえ！喜んでくれてなにより”なんて

爽やかに笑ってくれる深田くんは眩しい。

一緒に過ごした時間が増えるのに比例して

好きの気持ちも益々大きくなっていく

.