ねぇ、深田くん (ページ4)

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「女の子に奢らせてって言われたの初めてかも」

笑いながらそんなことを言う深田くんと

その隣を人一人分空けて歩く私。

飲み物を奢らせてほしいと深田くんに言うと

ありがとう、とすぐに頷いてくれて。

今はぎこちない距離感を保ちながら自販機に移動中。

深「生徒手帳届けた時さ、なんも反応なかったじゃん？」

『あ、うん…』

深「俺嫌われてんのかなーって思ってたから

お礼しに来てくれたのも、正直びっくりした」

『あの時は緊張してて…』

深「緊張？同級生やん笑」

そう言って笑う深田くんの横顔は凄く綺麗で。

深「今も緊張してる？」

『ちょっとだけ、』

深「なんでよ笑」

“好きな人だから、緊張しちゃうんだよ”

なんて言えるはずのない返しを心の中で呟く。

「え…」

「誰あれ」

触れてなかったけど、深田くんといると

女の子達からの視線が痛すぎるわけで…

いつもより自販機までの道のりが長く感じた。

深田くんは全く気にしてなさそうだったけど

『深田くんは何飲みたい？』

深「俺は水で」

本当にお水でいいのかなと思いつつ

財布からお金を出し、小銭を投入口に入れていると

深「Aちゃんはなんの飲み物がすき？」

そう深田くんに聞かれる

りんごジュースが好きと答えれば、“おっけー”と返事をされて。

急になんだろうと疑問に思ったけど、

その答えはすぐに分かった

＿ガシャンガチャン

私がボタンを押してペットボトルが出てきた数秒後に

同じ音が隣の自販機から聞こえてきたから。

はい、と渡されたそれはりんごジュースで。

慌てて私もお水を渡せば、

深「交換こだね」

なんて爽やかに言うの。

『これ…なんで…』

深「これ好きだって言ってたでしょ？」

そういうことじゃないんだよな…

私がお礼をするためにここに来たのに、また恩を頂いてしまった。

『ありがとう』

でもここは深田くんの優しさに甘えよう

感謝を伝えたら、またあの優しい顔で笑ってくれたし。

彼の親切心を拒むことは、私にできない

深「じゃあ俺、先輩に用あるからそろそろ行くわ。水ありがと」

背を向けて歩き出した深田くんを見て

もう終わりか…なんて寂しい気持ちが芽生えた瞬間、

深田くんはこちらを振り向いてこう言った。

「またね」

今の私はその3文字が本当に嬉しくて。

またがあるって、期待してもいいのかな

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