ねぇ、深田くん (ページ3)

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美「お礼という口実で近づけるチャンスでしょ？

ほら早く行ってくる！！」

美琴に強めに背中を押されて

深田くんの教室の前に来たはいいものの、

既に人集りができている…

「竜生先輩いるかな？」

「竜生くんの顔見てから帰ろー」

改めて学年を問わない深田くんの人気っぷりを

目の前で見て、少しだけ沈む気持ち。

放課後なら昼休みに比べて人少ないと思ったんだけどな

『………』

どうしよう

生憎この人集りの中に入り込む勇気はない…

けど今日中にお礼は伝えたい、これは困った。

よし、もう少し後でまた来よう…！

いやでも深田くんが帰ってしまう可能性も…

なかなか決断できずに棒立ちでいると、

「ねぇ」

急に前から声をかけられて。

声の方へ顔を向けると、そこには綺麗な女の人が立っていた。

制服のリボンの色が青だから、3年生の先輩か

「すごい難しい顔してたけど、大丈夫？」

『あ、えっと…』

深田くんの周りに人がいすぎて困ってました…

なんて言えるわけがなくて、口ごもってしまうと

「もしかして竜生？」

『……え、』

まさかの図星をつかれてしまって。

驚きで更に言葉が出なくなっている私に

その先輩は笑顔で、“呼んでくるから待ってて”と言い残して

深田くんの教室に入って行ってしまった。

呼んでもらえるのはありがたいけど…

「竜生ー！女の子が入口で待ってるよ」

呼び捨てで呼んでるんだ、とか

深田くんとどういう関係なんだろう、

もしかして…

なんて考えたくもないことが頭に過ぎってしまう。

けれど、そんなこともすぐに吹き飛んだ

だって、

「あ、Aちゃん」

前から知ってる友達を見つけたような顔をして

私の名前を好きな人が呼んでくれたから。

深「どうした？呼んでるって聞いてさ」

まだしばらく名前を呼ばれた余韻に浸りたいけど

今度はちゃんと、伝えなきゃ

『あのね、』

目を見て…

『さっきはお礼言えなくてごめんなさい。

生徒手帳、届けてくれてありがとう』

ちゃんと言えた…

ホッとすると同時に

深「いえいえ、どういたしまして」

そう言って優しくまた笑ってくれる深田くん。

“お礼という口実で近づけるチャンス”

そんな優しい顔を見て、不意に過ぎる親友の言葉

こんなチャンス二度とないよね。

気づけば、考えるより先に口が動いてた

『あの、飲み物奢らせてください…！』

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