ねぇ、深田くん (ページ13)

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『深田くんっ…！』

なにも考えずに彼の名前を呼べば、

驚いてこちらを一瞬見てすぐに顔を背けられてしまう

一瞬見えた深田くんの表情は苦しそうで。

私には、涙を我慢しているように見えた

『あ、の………』

今は1人でいたかった…？

見て見ぬふりをした方が良かった…？

どうするのが正解だったかなんて分からないけど

全身雨でずぶ濡れの好きな人を放っておくなんて私はできない。

『これ、ハンカ＿』

ハンカチを渡そうとすれば

深「ごめん」

遮られる言葉

胸がギューって、一気に締め付けられた。

ハンカチすら渡させてもらえないのか…

そうだよね、深田くんが今求めている相手は私じゃ＿

深「昨日、1人で運ばせて…手伝えなくてごめん」

『え…』

てっきり、“いらない”って拒絶されると思ったから

予想外の謝罪に戸惑ってしまう。

昨日の事、気にしてくれてたんだ…

拒絶されたわけではなくてホッとしたと同時に、

気にしてくれていた事実が嬉しくて少し頬が緩む。

でも…

なんで、

『なんで今謝るの…！』

深田くんは困った顔をしながら

深「ごめん、謝るの遅かったよね」

なんてまた謝る。

違うよ、そういう意味じゃなくて。

私が言いたいのは…

『自分が1番辛そうにしてるのに、なんで今謝るの…』

分かってるよ、深田くんは優しいから。

自分の感情がどうであれ、人のことを優先的に考えるんだよね

でもね、好きな人には…深田くんには…

『もっと、自分の気持ちを大事にしてほしい…！

自分の気持ち押し殺さないで…

辛い時まで人に気遣って謝ろうとしなくていいんだよ』

お節介な事をしている自覚はあったけど

考えるよりも先に口が動いていて。

『深田くんは優しすぎる…もっと我儘になっていいんだよ、？』

深「…我儘になったら全部崩れるから…俺にはできない」

“全部崩れる”ってどういう意味なんだろうか

一瞬そんなことを考えたけれど、

目の前にいる彼があまりにも苦しそうだったから

勢いでまたお節介な事を口走ってしまった。

『じゃあせめて…私といる時だけは我儘になってほしい』

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