ねぇ、深田くん (ページ11)

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「やっと見つけた！」

なんでこう、タイミングが被るんだろう。

「竜生！」

深田くんに駆け寄る綾井先輩。

綾「私ね、決めたの！やっぱり…って、なにそれ」

深「あー、これ運ぶの手伝ってた」

深田くんが私を見て、“1人じゃ大変だから” って。

それを聞いた先輩は、目を見開く。

綾「竜生の教室の前で会った子…！」

『…お久しぶりです、あの時はありがとうございました』

綾「全然だよ！また会えたね〜」

なんとも言えない、このモヤッとした気持ち…

綾「全部持ってあげてるんだ、優しいじゃん」

深「莉羽は俺が昔から優しいの知ってるでしょ？」

綾「優しかったっけ〜？」

深「ねーえ！酷いやん！笑」

キツい、なぁ…

呼び捨てでお互いを呼んでいて、昔からの幼馴染で、

美男美女で、二人とも優しくて、

お似合いだな…なんて思っちゃうよ

そんなこと、思いたくないのにさ。

綾「あ、てか私邪魔だよね？

ごめん、竜生に報告したいことあって呼び止めちゃった」

深「報告？」

綾「うん、でも…」

言葉を詰まらせて、深田くんに目配せをする先輩。

…あ、私がいたら話せないことなのか

深「…これ置いてくるから、後ででいい？」

綾「うん、いつもの所で待っ＿」

『大丈夫です…！』

いきなり大きい声を私が出したから

驚いた表情でこちらを見ている二人。

『やっぱり申し訳ないし、私が頼まれたことだから…

深田くんは先輩と行って？手伝おうとしてくれてありがとう』

深田くんの手からノート類を取って、軽く会釈をする。

そして二人に背を向け、職員室に向かった。

『…………っ、』

途中で後ろを振り向けば、

深田くんの手を引いて歩く先輩の姿が見えて。

振り向かなかったら良かったな…

『はぁ…………』

ほんとは、一緒に職員室行きたかったんだよ

でも…

深田くんが抱いている知りたくない気持ちが

あれ以上一緒にいたらわかってしまう気がして、

それが嫌で、怖くて、苦しかったの

“ 「ねーえ！酷いやん！笑」 ”

優しくて、大切でたまらないって顔、してた

…まだ、好きな人の気持ちには気づかないふりをさせて。

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