ねぇ、深田くん (ページ1)

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窓際の前から2番目の席

ここが私の特等席。

『…あ、』

窓から外を見渡せば

すぐに見つけられる好きな人

きっと恋してる女の子なら分かるはず。

不思議と、好きな人のことはすぐに見つけられてしまう

「ナイッシュー！」

「さすが！」

「深田ナイスー！」

今日はシュート練か、なんて思いながら

教室から朝練を見ている私のことを深田くんは知らない

ていうか、知ってるわけがない。

話したこともなければクラスも違うし

人気者の彼と私に接点があるはずないから。

『かっこいいな…』

高一のときに深田くんに一目惚れしてから、早1年。

みんなより少し早く学校に来て

こうやってサッカー部の朝練を見るのが私の日課

「キャー！！！」

「竜生くんかっこいい！！」

「がんばってー！！」

外から聞こえる女の子たちの黄色い声援

あそこに混ざって応援する勇気はないから

こうしてひっそり、1人で教室から彼のことを見続けている。

「まーたやってる」

「Aちゃんもよく飽きないねー？」

『またシュート決めてる…！』

「ダメだ、聞こえてない」

見てるだけで幸せ、この距離で十分

私はこっそり片想いしてるくらいが丁度いいんだ

そんな風に自分に言い聞かせるのも日課になってて。

本当の気持ちはまだ知らないフリ

きっと自覚したら抑えられなくなるから。

『はぁ……』

この溜め息もいつもの日課に…

『…黒田くんっ！？』

黒「もー気づくの遅い」

目の前には、ムスッとした顔をしている黒田くんと

「ずっと黒田そこにいたんだよ？笑」

笑いながらこちらを見ている親友の姿があって。

『ごめんね、気づかなかった』

黒「いーよ、許してあげる」

親友の美琴と、高校に入学してから仲良くなった黒田くんと

朝こうやって話すのも私の大切な日課。

二人は私の好きな人を知っている唯一の友達で、

相談に乗ってくれたりもする。

黒田くんはたまに、

「俺にすればいいじゃーん」

なんて、本気なのか冗談なのかよく分からないことを言うけど。

美「ていうか何回も聞いてるけどさ

もっと深田に近づきたいと思わないわけ？」

『私は見てるだけで幸せなの』

黒「………」

そう、見てるだけで私はいいんだ

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