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赤間遊兎 前と同じように。 ページ1

各部代表に渡す資料を持って、私は赤間代表の部屋の前に立った。


私はいわば、生徒会に属している人である。




「………果たして赤間代表は居るのでしょうか…?」




ドアの前で唸る。


「居たところで…」





  会いたくない




と思う。



私と赤間代表は中学校が同じで、席が隣だったからかよく話していたし、赤間代表の事を一番知っていると思う。


姉妹校から転校して目が合うことはあれど、演技をしている赤間代表を見ると、

胸が痛くなり話しかけ辛くなった。


話しかけても最初の赤間代表の一声が「初めまして」だった。



だから、赤間代表との関係を偽り、あたかも初めて会ったかのようにその時は接した。





「…もし会えば、なんて声をかければいいのでしょうか…………」






暫く考え、私はくるりと後ろを向き、来た道を戻った。




...................................





暫く歩いていると、前方から赤間代表の声が聞こえた。


私は慌てて柱の影に隠れた。


…何をやっているんだ私は…。


つくづく呆れる。


こんな自分の態度に。




「じゃーな」


「おー」



赤間代表とその友達…だろうか。の声が聞こえてくる。


部屋に帰るのだろう。


静かに暫く身を潜める。


もう行ったかなと影から身を出すと、案の定赤間代表はそこに居た。


「っ…あ……」



赤間代表が私に気づき驚く。



「…赤間代表、今度の会議の件で、書類を」



相変わらずの律儀な態度でその場を遣り抜く。


空気が凍り付くのが分かる。



「…っあぁ、ありがとう。じゃあね」



私は向けられた演技の笑みを返さず、無言を貫いた。



書類をもらい、私の横を通り過ぎる赤間代表。



…これは本当に私がしたいことなのか。




本当は…



『A、おはよう』



朝HR前に交わした挨拶も、



『赤間君!この本とても面白いんです!』



『…う、うん?分かったから学級長が朝から騒ぐのは止めようか…?』




一方的な私の話を聞いてくれた時も、




その全部。





全部を、取り戻したくて。







「待って下さい…赤間君」






久しぶりにその名を、その呼び方で呟いた。




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作者名:玲雨 | 作成日時:2018年5月29日 16時

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