この音響かせ!! 【なにわ男子】 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:11,592 hit

#22 月海ちゃん…… ページ26

丈一郎side

最近月海ちゃんが構ってくれなくなった。
大会が近づいて忙しいのは分かるんやけど、
やっぱり寂しい。
俺達なにわ男子７人は副顧問の新妻先生と合奏や。
顧問の佐藤先生も副顧問の新妻先生もどちらも全国大会出場経験ありの人なんやって。
佐藤先生はOboe、
新妻先生はHorn。
殆ど基礎合奏&曲練習。
何とか吹けるようになったんやけど、月海ちゃん達にはまだまだや。
皆どんどん上手くなってる。
俺も上手くならへんと。

吹いて思ったんやけど、
Tubaって大変なんよ。
重いし、
息は使うし、
何よりメロディーないし。
初めて金管楽器吹くから。
指導係が、月海ちゃんで良かったと思う。

ｶﾞﾁｬ

新妻「はい、今日の合奏は……と言いたいところなんだけど、皆自分の楽器持って合奏室に行きます。見学ねー。」

＊

佐藤「岶緖さん、なにわ男子に教えているから、藤原君の指導係だからといって調子乗っていたんではないですか。最近おかしいですよ。反応も遅い。音もまともに出ていないし、腕が落ちています。」

俺が合奏室につく頃、佐藤先生の怒鳴り声が聴こえた。
岶緖……?
月海ちゃんの苗字や……。

そんなことない、って否定したいねん。
上手いやろ。って。
俺から見たら、かもしれへんけど。

月海「っ、すみません……。」

ごめん。聴いちゃって。
気まずいだろうなぁ。

それから何分たったんやろうか。
佐藤先生の「入ってどうぞ。」というイラついた声が聴こえた。
俺は扉を開ける。

月海「ぁ。丈くん……。」

俺はポケットに突っ込んであったティッシュを渡す。
月海ちゃんの顔は敢えて見ないことにした。
月海ちゃんの目に涙を浮かべているのを分かっているから。
月海ちゃんはビックリしてこっちを見てる。

丈一郎「大丈夫や。」

こんな俺が言える台詞じゃないけど。
少しでも、その気持ちを軽くしてあげたくて。

月海「ｸﾞｽｯありがと……。」

彼女は少し笑うと涙を拭いた。
その後の月海ちゃんの音はさっきとは違う、
明るく合奏室中に響いていた。
俺でも分かった。

佐藤「どうしたんですか。岶緖さん。吹けるなら最初から吹いてください。」

いつもの月海ちゃんに戻った。
俺は、いつもの月海ちゃんが、良いんや。