炎柱さんは私の事が好きらしい【煉獄杏寿郎】

第42話 ページ42

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私に好きな人がいるっていっても、きっと杏寿郎は自分の事だとは微塵も思わず、別の人だと思うだろう。


でも落ち込んだり悲しんだりしている様子はないし、いつも通りだし、なんだか不思議な感じだ。



「…私も言ったよ、これで良い？」

「いや、君の好きな人がどんな人なのか聞いてないぞ！」

「ええ、それも言うの？」

「俺は先程話したからな！」



どんな人って言われてもあなた自身なんですけども。
でもこれで、もしかしたら自分の事かもしれないと思って貰えるかもしれない。


杏寿郎から目を逸らさずにしっかり見て話し始める。



「そうだね…その人はとても強くて大きくて暖かくて、芯が通り過ぎてるくらい真っ直ぐな人で、自分の責務を全うしようと努力を怠らない人」

「それはとてもいい事だ！」

「自分の事よりも他人の事を優先する人で、自分は全く弱音とか吐かないし…正直もっと自分を大事にして欲しいし甘えて欲しいと思ってる」



これは本音だった。
杏寿郎はいつも周りや私の事を大切にしてくれてるけど、自分の事はどうなの？と思う時が多々ある。


少しでも伝わってくれるといいな、なんて。



「すごく男らしくて格好いいんだけど、たまに子供っぽいところがあったりズレてるところがあったりして可愛いんだ」

「そうか！」

「戦ってる時の大きな背中を見るともう大丈夫だって安心するし、照れてる顔は可愛いし、ご飯食べてる時とか特に大好物食べてる時の顔なんて最高。落ち着く声してるし！あっ、あと…」

「いや、もう十分だ！！」



勢いがついて杏寿郎の大好きなところをとことん話してやろうと息付く暇もなく喋っていると、すごく大きな声が私の言葉をさえぎった。



「もう、わかった、君がその人の事をどれだけ好きか分かったから、うむ、大丈夫だ！」



その言葉と共に杏寿郎の目線は私の頭の上を向く。
目を逸らされた。表情は変わらないけど、わかる。


少し言葉が詰まる感じと合わない目線、微かに醸し出される雰囲気が、嫉妬していると、そう言っているようなものだ。



「君にそれ程想われている人は、羨ましいな…」

「杏寿郎…」

「いや、その…君みたいに立派な人に慕われると言う事は、余程その人も立派なのだろうな！」



今度は分かりやすくしゅんとした顔をする。なんだか良くない事を言ってしまったみたいになってしまった。

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