第41話 ページ41
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杏寿郎は体格がいいので歩幅が大きい。
人混みの中から探すのは大変だと思い、店を出た先で辺りを見渡した。
「あっ」
大変だと思ったけど、ぽつんと飛び出る黄色い頭を案外簡単に見つけた。
背が高くて派手な出で立ちに感謝しながら、人ごみを掻き分けてそちらへと急ぐ。
「きょうじゅっ、あ、すみません、ごめんなさい通してー!」
もう少しで手が届く所で人の波に逆らえずに行く手を阻まれてしまった。
これじゃあ追いつく事なんて無理だと思ったその時、力強く腕を引かれた。
「A、女子会はもういいのか?」
「杏寿郎!」
腕を引かれたまま柔らかい温もりに包まれたと思ったら、まさに追いかけていたその人の声が上から聞こえた。
上を見上げると微笑む杏寿郎と目が合う。
「追いかけなきゃって思って、抜けてきたの」
「そうか!」
「2人には今度謝っとかなきゃ」
杏寿郎に引き寄せられたままだったので、少し距離を取ろうとすると、まるで逃がさないと言わんばかりに掴まれたままだった腕を引かれ、もう片方の手が背中に回る。
「ちょ、」
「すまない!追いかけて来てくれたという事が嬉しくてな…少し、このままいいだろうか」
そう言われてしまうと嫌だとも言えないし、私も抱き締められていることが嬉しい。
暫くそのままにしていると、満足したのか解放される。
いつものキリッとした顔の杏寿郎と向き合って立っているが、お互い見つめ合うだけの無言の時間が続く。
「そ、そういえば、さっきは大変だったね」
じっと顔を見合うのが少し照れくさくなってしまってつい先程の事を話題にしてしまった。
「うむ、つい胡蝶に聞かれるがままに答えてしまったが、忘れて欲しい!」
「え、なんで? 忘れるわけないじゃない。杏寿郎の好きな人の事知れてよかったし?」
思わず笑ってしまうと、杏寿郎は口をへの字に曲げてむっとしてしまう。
「俺は話した!だから、Aも話すべきだ!」
「えっ、なんでそうなるの」
「好いている人はいるのだろうか!」
「いやいや、まって!」
杏寿郎の大きな手が私の肩を掴む。ずいっと鼻先まで顔を近づけられ、またもや逃げることが出来なくなってしまった。
これは話すまで絶対解放してくれないやつだ。
「…仕方ないね、いるよ、好きな人」
「……そうか!」
分かりやすく落ち込むかなと思ったけど、杏寿郎は先程と変わらない様子で笑っていた。
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青葉(プロフ) - 莉子さん» そんな風に言って頂けるなんてありがとうございます!とても励みになります´ω`* 頑張ります!! (2021年3月1日 23時) (レス) id: be645905ff (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 先程更新された分のお話読みました!凄く胸がキュンキュンしました^^やっぱりウブな煉獄さんが好きです!原作のイメージそのままです( ´ ▽ ` )更新頑張ってください! (2021年3月1日 21時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
青葉(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます。そうなんです、常日頃は鋭敏でも恋愛事に関しては鈍感だといいよなぁなんて思いますね^^* (2021年3月1日 21時) (レス) id: be645905ff (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - もどかしいですねぇ^^でも煉獄さんぽくて、好きです。絶対鈍感ですもんね。 (2021年2月26日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
青葉(プロフ) - ひまわりさん» 思う存分妄想を吐き出しております!もっと勉強しながら頑張ります、ありがとうございます! (2021年1月27日 10時) (レス) id: be645905ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青葉 | 作成日時:2021年1月16日 23時