距離の話をしよう ページ8
･
当日。
私はリウォンと共に会場へ入るために列に並んでいた。
「はい、これ」
「ん、ありがと」
リウォンからチケットを貰いスタッフに渡す。
中にはいると大勢の人のざわめきが聞こえた。
ライブに来るのは初めてだからか、とてもワクワクした。
らしくないな。
「目がキラキラしてるよ」
「え、マジかよ」
眉間をグリグリと押しながら歩いていると、誰かにぶつかったらしい。
「あ、すいま___」
「どこみて歩いてんのよ！」
「たからすいませんって」
なにやら相当ご立腹のようだ。
濃い化粧に香水、派手な服、김 태형と書かれた大きなボード。
今の私はだいぶ嫌な顔しているだろう。
もしくは我慢して歪んだ顔になっているはずだ。
「は？ぶつかっといて何？その顔」
隣に居たもう一人の女性が睨み付けてくる。
こっちも派手な格好だ。
「ああ、はいすいませんでした」
めんどくせぇ。早くいこ。
リウォンの腕を引いて座席へと向かった。
「………」
だがしかし、あの派手な女達の席は割りと近くだった。
マジか。
とりあえず、いい気はしないな。
しばらく経つと舞台が暗くなり歓声が大きくなった。
いよいよらしい。
三階なので人が小さく見える。
男が７人、現れた。
「……ジミン」
７人のうち、一人、見知った顔があった。
やはり、あれは私がよく知るパク ジミンだ。
隣では私の存在を忘れているかのように叫ぶリウォン。
なんだか、別の世界に居るようだった。
ライブも後半に差し掛かり、アンコールとなり一旦区切りがつく。
「あー、もう超かっこいい！！
ね！Aはいったい誰が好___
どうしたの？」
「なにが」
「なにがって…涙が…」
「え…」
急いで目に手を当てると水滴がついた。
私の涙だった。
「………ううん。なんでもない。
汗を涙と見間違えたみたい！
ごめんね」
気を使わせてしまったようだ。
リウォンは前を向いてステージを眺め始めた。
いつから出てたんだろう。
ジミンを見てたら、安心とか不安とか色々蘇ってきて…。
でも、それを感じるには___
私とあいつの距離は、遠すぎたから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：大晦日詩乃 | 作成日時：2016年12月23日 17時
