事件の話をしよう ページ2
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その日は、次の講義の為に早く教室に入っていた。
人もまだまばらで、静かだ。
飲み物が欲しくなり、適当に準備を終えたあと財布を持って自販機へ向かう。
水を買って歩いていると、なにやら教室の前でたむろしている女達が居た。
短いスカート、濃い化粧、派手な髪色、香水の香り。
明らかにヤバそうな奴らだった。
臭いが混ざって吐きそうだ。
教室に入る時、奴らとすれ違う。
心なしかこちらを見て笑っているように感じた。
嫌な予感がして自分の席へ素早く戻る。
……何かがおかしい。
ノートや参考書は全く変わらないのに、何かが…。
「あ、ポーチ」
机に置いておいたポーチが跡形もなく消えていることに気がついた。
大変だ。
あれには色々と大切な物も入っている。
なにより、あれは…。
必死に辺りを探していると、甲高い女達の笑い声が耳に響いた。
そちらを見ると、腹を抱えて笑っているさっきのヤバそうな奴らが居た。
焦っているからか、いつもは何も思わないのに、腹が立ってきている。
何も言わずに睨んでいると、先頭に居た女が私の視線に気づいてあるものを出した。
ハサミと、私のポーチ。
「テメェ、それ返せよ」
「ええ、良いわよ」
他の女達はクスクスと笑っている。
「ただし、貴方にもっとピッタリなデザインにしてからね」
そう言ってポーチを裂いた。
中身がバラバラと落ちる。
「うわー、結構入ってたー」
「色気付いて鏡持ってやんの。
あ、でも今のでバキバキだわ、どんまーい」
私は、苛立ちでどうにかなりそうだった。
何かを言い掛けたとき、背の高い男が入ってきた。
「え。なんの騒ぎ？」
彰人だった。
「あ、彰人君！これはその…」
先頭に居た女がアタフタと言い訳をする。
彰人は眉をしかめながら裂かれてポーチと呼べなくなったそれを見た。
「…最近、Aの物が無くなってるのって、あんた達のせい？」
そう言った彰人の目は怖かった。
彰人は無言で私の元へ来ると、リュックを下ろした。
そして
「Aになんかしたら許さねぇから」
私の肩を抱きながらそう言った。
女達は顔を赤くして悔しそうにする。
だが、一人。
そう簡単にはいかないやつもいるようだった。
「なによ、こんなボロいポーチのひとつやふたつ。それに」
腰を屈めて何かを拾い上げた。
「あんた、本当にムカつくからさ」
拾い上げたのは、一枚の写真だった。
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作者名：大晦日詩乃 | 作成日時：2016年12月23日 17時
