私達の主役は〇〇だ

No.79 一番心に残ったことは ページ34

項垂れた私を、もう何もしないと思ったのかゾムの拘束がゆるむ。

「今謝った？ねぇ、誰に？どの人に？」

はなみに目を向け、全員に目を向け

『・・私は！！！』

空に向かって吠える。全員驚いた顔になり、一斉にこちらを向く。

『確かに騙しました、この子の復讐のために皮をかぶりました！』

謝るつもりは毛頭ないが。

『今の私ではなにも信じてもらえません。ですが、ですけれど！！』

私はいい。わたしはどうでもいい。彼らに会えただけで、もう充分に幸せだから。

『この子への仕打ちは、どうか、どうか！どうか信じてください！』

だけどこの子はどうなる。あやふやになって話がそれて終わるだろう。いつかは思い出す人間も消えてしまう。なら

『私の目的は！何もしていない純真無垢なこの女の子を、怪しい薬に頼らざるを得なかった傷心な女の子を、助けたかっただけです』

最後は最後で飾りつけよう。彼らには悪いが、一番心に残る幕の引き方をしよう。

『私はどうでもいい、ただ、この女が何をしたか。私の部屋の机をぶっこわして見てください』

誰にも知らないあの仕組み。誰も知らないあのノート。誰かに知ってもらわなければいけないあの子の思い。

『短い間でしたが、お世話になりました。』

頭を下げ、もう一度全員を見る。それでもやはり目を合わせてくれない。まぁだろうな。だけど、少し寂しいな。

「三文芝居はもう終わり？」
『三文払えやクソ野郎』

中指を立てて、向きを変えて走る。目的は食堂の大きな窓。内鍵を開けて、外開きのガラスを思いっきし開く。

ここは二階だ。下は土だが見るからに硬い。人一人なら、余裕で

あ？なに？

何をするか？勘のいいみんななら分かるだろ。

最後がこのオチなんて、ありきたりだって？

オーケーアンチは天国で聞こう。

美少女の体と心中できるなんて、夢のようじゃないか。


窓枠に足をかけて、後ろ向きに窓から体を放り投げる。みんな驚いてるだろうな。こうでもしなきゃ、誰も信じてくれないでしょう。

こうすりゃ、誰かは心に留めてくれるだろ。


『し、にた、くない』


無意識に、脚が窓枠から離れたときに言葉が出る。

そんな自分に驚き、目から雫がこぼれてしまった。



痛くないといいな、なんて



死にたくないな、なんて




頼むから考えないでくれ









「死にたくないなら飛ぶんじゃねぇ」

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