【C】雨音カフェテラス。《1》【十文字アタリ】 ページ14
雨の日だからこそ、出かけたくなる時ってありますよね。
今日の私は、丁度そんな気分でした。
夏の終わりを紅く儚い色と共に告げた彼岸花さんも今はもういなくなって、吹く風はすっかり冷たく、私達に試練の予兆を伝え始めています。
そんな日の雨はもちろん今までよりも冷たくて、雫から守るための傘を持たず森の方へと駆け出した私を咎めるように、服を、髪を、頬を濡らしていきます。
でも、私は雨が好き。
なぜなら、喉を乾かしているお花さん達に元気を与えてくれるし……なにより雨にはたくさんの思い出が詰まっているから。
濡れる度に、私はその一つ一つを思い出しているのです。
そしてこういう日には決まって、また新たな思い出ができます。
それはそう、奇妙で、不思議で……素敵な思い出が。
「……あれ?」
ぴた、と足を止める。
少し進んだ森の中、一軒の小さなお店がありました。
こぢんまりとしていて、それでいてかわいらしい。
お店の前には木でできた椅子やテーブルがあって、看板を見てみるとそこはカフェだったようです。
雨が降っているためか、外には誰もいません。
「こんなとこ……カフェなんてあったっけ?」
もちろんだれも答えてはくれないのだろうけれど、一度気になってしまったものは確かめなければ気が済みません。
とくとくと小さく胸を叩く少しの緊張を抑えて、木造の大きな重たい扉を開けます。
するとそこには……。
「……よっ」
「え……っ?」
見慣れた髪型と瞳の色。
いつもと違うのは服装だけでした。
カウンターテーブルの向こうには、いつもアリーナで一緒にいる、あの子。
「ど、どうしてアタリくんがここに……?」
「まーまーいーから、そこ座れって」
目の前のカウンターをコンコンと軽く叩いて、私を導く。
言われた通りに、私はその席に座ります。
テーブルの上に置いてある小さな冊子は、おそらくメニューの一覧でしょうか。
「……それではお客様、ご注文を」
「あっ、えぇと……」
冊子を開いて、まず私は戸惑いました。
だってそこには、何も書かれていなかったのだから。
「……あの、これって……?」
「何でもいーから、好きなモン言ってみな」
アリーナにいる時とはまったくかけ離れた穏やかな青い瞳と優しい声で、店員さんはそう言います。
私は少し考えると、まっさらな冊子をそっと閉じて置きました。
「……おまかせ、します」
「……かしこまりました」
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レウィシア(プロフ) - マルリリさん» わぁ……!ありがとうございます。そう言ってくれる人が一人でもいらっしゃるだけで、私の心はとても救われます。これからも書いていきますので、どうか末永くよろしくお願いします……!(最敬礼) (2017年10月23日 20時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
マルリリ - ハロウィンの話メチャクチャ面白いというか、全部の話が面白いです!更新頑張ってください!! (2017年10月23日 1時) (レス) id: 5ef7ab9b35 (このIDを非表示/違反報告)
レウィシア(プロフ) - トーク機能を使うことで会話がかわいらしくなるあら不思議。 (2017年10月20日 0時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
レウィシア(プロフ) - まだお話も書いていないのに評価とお気に入り登録が来ていて驚いています……。ありがとうございます。(最敬礼) (2017年10月14日 11時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
レウィシア(プロフ) - 雪兎(うさぎ)さん» わぁひ。そう言ってもらえると私もとっても安心出来ます。ありがとうございます……!ちなみに私は全天もディーバもノーガードも持っておりません。← コメントありがとうございました。(最敬礼) (2017年10月14日 11時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レウィシア | 作成日時:2017年10月13日 19時