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*海人side
「お!いらっしゃい、お仕事お疲れ様!」
そう言ってAは出迎えてくれた
「待たせてごめんー!」
そう言いながら俺は中へと上がり、慣れた手つきで先程買ってきたお酒を冷蔵庫へと入れた
その際、箱はAにバレないようにズボンのポケットへと忍ばせた
その時、先程の元太の顔が脳裏によぎった
確実に見てたよな。
でも何も言ってこなかったし。
あー、ダメだ。今アイツのこと考えんのはよそう。
俺は意識を切りかえ、冷蔵庫に入っていた冷えたビールを手に持った
先程言っていた映画を探しているA
俺は背後からこっそりと近づき、その首筋に缶を当てた
「わっ!?……って、何すんのもう!」
そう言って怒るA
「なんて声出してんの。そそられるからやめて」
俺は笑いながらAの隣のソファーへと腰掛ける
「変態。馬鹿なこと言わないで」
そう言いながら視線をテレビに戻すA
あー、可愛い。襲いたい。
そんなことをつい思ってしまう
__________
気になっていた映画を見終わった頃
お互い良い感じに酔いが回ってきた
するとAが口を開く
「今日、泊まっていく…?」
その問いに俺は頷く
この先を予想したのかさっきよりも少し顔が赤らんだA
それからどちらからともなくベッドへと向かった
寝転がったAの上に跨り、乗る
服を優しく脱がしていく
ああ、もう我慢できねぇ
自分のベルトに手をかけ、緩めた時
「ちゃんと、付けてね…?」
そう言われ、俺はズボンのポケットに手を入れ箱を取り出した
その時、先程の元太の顔を思い出した
俺の異変に気付いたのかAは、のそりと上半身を起こして顔を覗き込んできた
「どうしたの?」
その声にハッと我に返り、「わりーわりー」と謝る
そしてもう一度、箱に手をかけた
しかしどうしてもちらつく元太の影
ああ、邪魔すんなよ。って、あー俺チキってんのかな。
先程までの欲はどこへいってしまったのだろうか。
「ごめん、今日はやっぱりやめておこう」
そう言って俺はAの上から退いた
「どうかした…?何かあったの?」
心配そうに聞くA
「いや、ただこれは俺の問題だから。本当にごめん」
そう言うとAはそれ以上は聞いてこなかった
その日箱の中身は減ることもなく一夜を過ごした
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作者名:ゆい | 作成日時:2021年8月10日 16時