検索窓
今日:13 hit、昨日:12 hit、合計:59,184 hit

10 ページ10

流石に只事じゃないと思い少し酔いが覚める




「どうしたの?大丈夫??」




『今から会いたいよ。だめ?』




ああ私はどうしてこんなに弱いんだろうか。




二つ返事ですぐに彼のところへ向かっていた




彼の家のインターホンを押すとすぐに扉が開いた




彼の姿が見えて




『元太?だいじょ』




言いかけたところで




「Aさん会いたかった………」




私の右肩に頭をぼふんとのせる




「ちょっと、ここ玄関だよ」




「お願い、もう少しだけこうさせて」




私は返事の代わりに彼の頭をポンポンと撫でた




少し経ってから彼はガバッと顔を上げた




「Aさんありがとう!充電かんりょー!!」




なんて言うから私は思わず




「無理しなくていいよ。理由は話さなくてもいいから私の前で無理しないで」




そう言うと驚いた顔を見せたがすぐに柔らかで儚い笑顔を見せて




「ごめんね、こんなつもりじゃなかったのに。俺だっせぇ」




私は首を横に振った




それから私たちはソファーに移動した




時間を刻む針の音だけが響く部屋




私はずっと元太の横で寄り添っていた




先に沈黙を破ったのは彼だった




「俺さ、」




ぽつりぽつりも言葉を紡ぐ彼




「Aさんに初めて会った日、そういう関係だった女に振られてさ」




「で、その時の女が自分で振っておきながらこの間やっぱり俺じゃなきゃだめだって言ってきたんだよ」




私は静かに相槌を打つ




「関係戻す気なんてさらさら無かったんだけどなんとなくなんで?って聞いてみたあいつなんて言ったと思う?」




ずっと俯いていたがそこで私の方を見つめる彼




「俺といると自分のステータスがあがる、ってさ」




フッ、と鼻で笑う元太




私を見つめていた瞳の奥が揺れた気がした




「今まではそんなこと言われても気にしたことなかったけどなんか急に不安になっちゃって」




気のせいかもしれないが彼の声が鼻にかかっている気がする




「結局は自分のことしか考えてなかったんだ」




ソファーの上で膝を抱えて体育座りをしながら俯く




私は何も言えず彼の頭をそっと撫でた




柔らかな彼の黒髪に触れると目が合う




「結局俺もAさんに頼ってるんだし弱いよな」




「アイツと変わんねーや」




ハハッと力なく笑う彼




私は気付いたら彼を抱きしめていた

11→←9



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (104 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
279人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆい | 作成日時:2021年8月10日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。