ある日、異世界に居た件について（男主） (ページ10)

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No.2 ページ10

治癒師や魔法師に診せたあと、熱と痛みに魘され冷や汗をかいている額を拭ってやる。

次に会ったら殺そうと決めた相手なのに生かしてしまった自分を疑った。

なぜ、生かしてやる必要がある。

今すぐにでも首を締めれば簡単に殺せるだろう相手が、血濡れた姿で気絶しているのを見た瞬間に血が沸騰したのを覚えている。

ｰｰｰなぜだ。なぜ、こいつが気になる？

徐々に呼吸も落ち着いて、顔色も良くなった男を一瞥したあと部屋から出ると、部屋の外で待機していたフィリックスが戸惑いながらも着いてくる。

「陛下…素性も分からない現状ですので、近くに置いておくのは危険かと」

最もな意見だが、フィリックスは俺とあいつが何回も会っている事を知らない。

「素性なら起きた時にでも聞けばいい…今はあの部屋に許可なく立ち入るな」

「かしこまりました。ですが、一つだけお願いがあります。専属のメイドをつけさせてもらっても宜しいでしょうか？」

「…好きにしろ」

専属のメイドに世話をさせる建前として監視役をつける気なのか、フィリックスは敬礼をした後、俺から離れて行った。

「…ち、」

自分の部屋に入り、隣の部屋に続く扉を一瞥した後、イライラを解消するために酒を飲む。

ただ酒を飲んだとしても、イライラがおさまることはなかった。