怪我人 ページ7
騒がしい。
フィリックスも騒ぎを聞きつけ、部屋から出て行ってしまった。
それに何故だか胸がざわつく。
ー…た、…け、てー
「…っ？」
あいつの声が聞こえた気がした。
弱々しいが確かに助けを求めているような声。
荒々しくソファーから立ち上がり騒ぎがする方へと向かうとアタナシアがこちらに気づいた。
「パパ！」
「陛下！」
「…それはどうした」
アタナシアが少し遠めでフィリックスに守られて不安げな顔で俺を見ている。
気を失っているだろう男を後ろ手に拘束していた騎士を一瞥する。
「はっ！侵入者を拘束しました！」
敬礼をした騎士を一瞥し倒れている男を見下ろす。
「そいつの顔を見せろ」
「こ、こいつのですか？」
「早くしろ、殺されたいのか」
「い、いえ！おい、顔をお見せしろ！」
敬礼をしていた騎士が押さえつけている騎士に言うと、そいつは前髪を掴まれて顔を無理やり上げさせられた。
ーーー男の顔を見た瞬間、血が沸騰した。
「離せ」
「しかし、」
「離せと言っている、死にたいのか」
俺が睨みつけると拘束を外した騎士は男から離れる。
倒れている男に近寄り、仰向けにしてやるが気絶していることによって、力が全く入っておらず、ダラリとしている。
「パパ…」
不安そうにアタナシアがこちらを見ているが、まずはこいつを治療せねばならない。
「陛下！その者をどうするのですか⁈」
フィリックスが慌てて近寄って来たため、ちょうどいい。
「魔法師と治癒師を呼べ」
「で、ですがっ！」
「…二度は言わん」
「ぁ、あたしも行く！」
気絶している男を抱き上げ、部屋へと向かい始めると、フィリックスは敬礼をし、騎士を連れてその場を離れていった。
アタナシアは不安げに俺を見あげ、何かを言いたそうにしていたが、今はこいつを優先する事にした。
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作者名：chamu. | 作成日時：2023年4月22日 13時
