第四話 ページ4
×××
───･･･それは、確か睦月も中旬に差し掛かった頃だ。
連日続いた降雪のせいで、当たり一面には美しい雪景色が広がっていた。
辺りはしんと冷えきっており、吐いた息は雪に負けないほど白く、息を吸うと冷たい空気が鼻から肺へと抜けていく。それだけでも器官に痛みを感じるほど、空気はひどく冷たかった。
また、手足の先から熱は奪われ、その冷気が皮膚に、肉に、血に───･･･そして骨にまでじりじりと染みこんでくる。
何をするにも億劫になる、そんな日だった。そんな日に限ってこの体は調子が良くなるものだから、相変わらずこの体は好きになれない。
───･･･だけど、前向きに考えよう。
次に体調が良くなるのはいつかわからないのだから。いつもは歩くだけでもつらかった。数歩進めば足がもつれて倒れてしまう。走ったことなんてなかった。
でもそれが今日、僕は歩けている。
この寒さも気が引き締まるようでいいじゃないか。･･･そう、前向きに。そのまま、右足、左足、右足───･･･｡
重心を前に掛けることで、歩みは少し楽になった。
覚束無い足元を見ながら歩き続けると、ふと母さんの今にも泣き出してしまいそうな困り顔が脳裏に浮かんだ。今頃は僕が寝床からいなくなっていることに気づいた頃だろうか。きっと母さん、びっくりするよね。家に帰ったら怒られるのだろうか。
───･･･迷惑かけてごめんなさい。そう思いつつも、歩みは決して止めたりしない。
(･･･今日だけは、許して)
｢はぁっ･･･はっ･･･はぁ！｣
呼吸が荒くなってきた。少し苦しい。体温が上がっていくのがわかる。けど、頬や手足に当たる空気は冷たくて、何だか変な気分だ。心臓が耳に移ったかと思うほど、どくどくと波打つ鼓動がやけにうるさく感じる。
足を一歩踏み出す度、体が重くなっていくのを感じる。それでも歩みを止めない。遠くから聞こる賑やかな声がむしろ歩みを早くさせる。
(あと、少し･･･！)･･･───だが、そんな思いも叶わず、ついに体の重みに耐えられなくなった足が力を失くし、そのまま頽れてしまう。
｢ああ、わっ!!!｣
足がもつれて正面から地面に倒れてしまった。
鼻の先をぶつけて、鈍い痛みが頭に響く。目が回る。
(早く起き上がらないと息が･･･！) 息をしようと呼吸をすれば鼻や口の中に雪が入る。体が鉛のように重く、力は雪と凍てつく空気に吸い取られていった。
×××
続く
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はちすか(プロフ) - 莓さん» コメントありがとうございます。わあああああありがとうございます！励みになります;; これからゆるゆると更新していく予定なので、また読んで頂けると嬉しいです！ (2023年3月10日 22時) (
レス) id: 5f02774b91 (このIDを非表示/違反報告)
莓 - うああああああ好きです！！！好きです！！！！設定とか全部好きです！！次の話楽しみにしてます！！！ (2023年2月20日 7時) (レス) id: fd5e919b08 (このIDを非表示/違反報告)
はちすか(プロフ) - アップルパイの生地さん» こちらの作品にもコメントして頂きありがとうございます。そう言って頂けて光栄です･･･！ 頑張れます。アップルパイの生地 様もお身体にお気をつけて、学校頑張ってくださいね (2022年7月18日 23時) (レス) id: 89de0f7806 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイの生地 - ふぇ...。どの作品もすごいです...。学校頑張れます！ (2022年7月18日 22時) (レス) @page3 id: 16abac1544 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はちすか | 作成日時：2021年11月2日 16時
