君と紡ぐ永遠＊３

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何度も考えた。

もしわたしが、羽生くんと同じようにフィギュアの選手だったら。

羽生くんの喜びも悲しみも、悔しさも痛みも。

もっともっとわかったんだろう、共有できたんだろう、って。



わたしと一緒にいて笑ってくれる羽生くん。

だけどこれからもそうだなんて、確証はない。

これからどんどん羽生くんはすごい人になる。

それだけは絶対に確かなこと。

そんな羽生くんは、変わらずわたしの隣で笑ってくれるだろうか。



わたしじゃない誰かの隣の方が、羽生くんは。





そう考えたら辛くて、悲しくて、胸がちぎれそうで。

それは、今でも変わらない。





だけど、羽生くんは。

わたしと一緒にいたいって、言ってくれた。

羽生くんにとって何より大切な、スケートを犠牲にすることになるのに。


逃げたい気持ちもあるのかもしれない。

それでも、スケートが嫌になったりしているはずがない。

こうして練習できない日々に、どれだけ焦燥と苦痛を募らせているか。

本人だって、わかっているはずなのに。


それでも、一緒にいたいって、言ってくれた。






「もう信じられないなんて、言わない。

　羽生くんの気持ちも、羽生くんが好きだって言ってくれたわたしも……。

　…だからもう、スケートを選んでいいんだよ」




ああ、なんて情けない。

この期に及んで、自然と笑えたかどうかわからない自分。

心からの本心だけど、やっぱり離れたくないと思う気持ちも、本当だから。

羽生くんの目に今のわたしは、どう見えるのかな。




「A、俺……っ」


「羽生くんは、どんどん進んでいくの。…そうでなくちゃ、ダメなの」




困惑したような、泣き出しそうな顔で絞り出した声を遮ったわたしの言葉に、羽生くんが絶句する。

ここでもし、ごめん、なんて言われたら、また泣いてしまう。



謝らないで。

悲しいんじゃない、まだ少し、寂しさに慣れないだけ。




あの日、この言葉を言ったわたしは、

胸の中にある醜悪で暗い気持ちの塊みたいに吐き出してしまった。

本当は、そんな気持ちで言っていい言葉じゃ、なかったのに。





羽生くんは旅立っていく。

わたしを残して、例えそれを後悔しても、振り向くことはないだろう。




だけど、それを悲しいなんてもう思わない。






「羽生くん…本当に、ありがとう……。

　いって、らっしゃい」






今度はさっきよりずっと、自然に笑えたような気がした。

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