29話 ページ29
.
『、は、？』
吹き飛ばされたことによる身体の痛みも全て忘れてしまうほど
目の前に広がる光景に激しい動悸がして冷や汗が流れた。
『なんだよ、これ』
まさに地獄絵図。
人々の断末魔と破壊音が響き渡り、火の海と化したエレジア。そしてその元凶であろうバケモノの姿だけが俺の瞳に映った。
.
『ウタっ！！』
どこいった
どこにいる？
俺はさっきまで一緒だったウタの姿を探して駆け回った。
『ウタｯ！！おい返事しろ！！』
喉が焼けるように痛かった。
煙が呼吸を妨げるように覆いかぶさって、炎の熱が俺の肌をジリジリと焼く痛みに引き返してしまいたかった。
＿＿＿＿＿それでも、
戦う術も何も持っていないアイツをほおっておくことなんて出来なくて、炎の立ちのぼるエレジアを走った。
『ウタｯ！！！いい加減出てこいよｯ！！』
ふざけんな、馬鹿野郎っ
断末魔が消えていき、ただ破壊音と炎の立ち上がる音だけが響くことに死というものを間近に感じて、じわりと涙が溢れそうになる。
しかし
その瞬間耳に届いた声に涙は引っ込んで、
微かに聞こえた泣き声に、俺は炎の立ち上る建物に目を向けると躊躇いもなく足を踏み入れた。
『！大丈夫か』
そこに居たのはまだ5歳ほどの男の子。
苦しそうに咳をしながら泣きじゃくる小さな姿に燃える木片を素手でどかしながらかけよればママとパパがと泣き縋られた。
『...大丈夫だ。』
...親の姿が見えないということはきっと、そういう事だろう。
震える身体を安心させるように背中に手を回して、この子に炎の手が伸びないように抱き上げた。
『もう大丈夫だよ』
なんて、この子にとってなんの助けにもならないこの言葉は
ただ自分を安心させたいがための自己暗示。
大丈夫。何とかなる。
きっとウタは無事だ。
シャンクス達は、無事だ。
｢ｯA！！おいAがいたぞ！！！｣
｢こっちだこっち！！！｣
男の子を連れて建物外に出れば聞こえてきた声。
『み、んな...』
＿＿＿＿＿ほら、きっと大丈夫。
駆け寄ってくる皆の姿を最後に視界が霞んでふわふわとした感覚に膝から崩れ落ちた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2818人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空舞(プロフ) - 無理矢理あけたページに書きたかったお話追加しました🙊文字数足りなくてコメント欄に感謝を。評価がいつの間にか1500票越えてました🥲💞完結させた時は1200ぐらいだったのに、、ありがとうございます😭 (10月21日 14時) (
レス) @page50 id: 06939a4bea (このIDを非表示/違反報告)
空舞(プロフ) - しらすさん» しらすさん返信がありえないほど遅くなってしまい申し訳ないです🙇🏻♀️💦嬉しいお言葉ありがとうございます！そう言っていただけると凄く嬉しいです😭💞 (10月15日 11時) (レス) id: 06939a4bea (このIDを非表示/違反報告)
しらす - え待って待って待って神泣きましたこんな作品をありがとうございますもう、、、大好きです (6月23日 20時) (レス) @page50 id: b9c047ab39 (このIDを非表示/違反報告)
空舞(プロフ) - 月詠さん» 月詠さん今更ながらのご返信になり申し訳ないです😭失踪していてすみません、ｯ！そして素敵なコメントありがとうございます🥹そう言っていただけると凄く嬉しいです！ご拝読ありがとうございました🙇🏻♀️ (2023年4月22日 12時) (レス) id: 06939a4bea (このIDを非表示/違反報告)
月詠 - 、、、は？え、滅茶苦茶涙腺崩壊させてくる神作品なんですが？？？ヤバい、途中胸が苦しくなったわ。完結おめでとうございます、滅茶苦茶面白かったです (2023年1月16日 18時) (レス) @page49 id: 9753754a57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空舞
| 作成日時：2022年9月2日 17時
