検索窓
今日:173 hit、昨日:893 hit、合計:169,631 hit

兄に殺されそう ページ36

.


A。

目の前の男の唇から紡がれたその言葉は、まるで呪いのように一切の光もないほど冷たかった。

まるで、それはお前の名じゃない。お前が持つべき名ではないと言っているかのように。

油断していた。

この試験にイルミがいるというのは、ヒソカからの情報で分かっていたというのに。

まさかよりによって目の前の男だったなんて。

冷たく無機質なこの空気を打破しようと、今できる精一杯の笑顔でイルミ(仮)に語りかけようと試みた。




『あの、貴方の名前は…』

「うるさい黙れ」

『ガッ……』

「Aという名を語っていいのはこの世に一人しかいない。気安くその名を呼ぶな」




喉を掴まれ持ち上げられた私は、息のできない苦しさに藻搔く。

だから、私はA=ゾルティックなの!!

しかも兄さん…こんなか弱くて美少女の女の子にそんなひどいことするなんて…!!

なんか殺されるとかバレるとかもうそんなことはどうでもよくなってしまった私は、イルミの手首を掴んで声を絞り出した。




『イル……にぃ……ッ!』

「っ!?」

『ケホッ…』




やはり思惑通り。

イル兄。そう呼ぶのは兄弟の中でも私しか居ない。

イル兄と呼んだらこんな反応をするのなんてお見通しなのだ。

赤くなった首に手を当て、涙目でイルミを見上げれば、彼は針を抜いた。


ベキッボキッ…


骨が折れるかのような音を鳴らしながら現れたそれは、やはりイルミそのもので。

懐かしさから、そしてある種の恐怖から私は一筋涙を流した。




『イル兄…!!』

「A…?本物のA?」

『そう、そうだよ。訳あって今は本体じゃないんだけど…って、わ!』




まただ。言うならばそう、デジャヴ。

私を抱きしめる兄に、温かさを感じる。

冷たく無機質で、暗く深い兄だが、きちんと人で、体温があることに今更ながらホッとする。

久しぶりの兄のハグを、満喫した。


.

それと、愛→←ふたたび詰み



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (147 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
301人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

メロンパン18号 - 好感度系の作品をH×Hでやってくれるなんて…主様ありがとうございます!読ませていただきます! (2023年4月3日 14時) (レス) @page39 id: fd8275b1aa (このIDを非表示/違反報告)
ふぃあろ(プロフ) - もさん» まじですかありがとうございます!!!! (2023年3月22日 15時) (レス) id: 57f453a332 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最高…! (2023年3月22日 10時) (レス) @page40 id: f3ac1f4c1b (このIDを非表示/違反報告)
ふぃあろ(プロフ) - ぽちゃ子さん» うわぁ!嬉しいです!!!ありがとうございます!!!頑張りますね!!! (2023年3月22日 8時) (レス) id: 57f453a332 (このIDを非表示/違反報告)
ぽちゃ子(プロフ) - 文章が読みやすくて内容がスルスルと頭に入ってきました!!頑張ってください!! (2023年3月21日 22時) (レス) @page33 id: a18afddbb5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ふぃあろ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uekukz/  
作成日時:2023年3月18日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。