ヌナ、あなたのそばに 2 (ページ6)

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30.歌声ページ6

野外イベントの裏側がこんなに大変だなんて思わなかった。

大部屋のような控え室に何組もグループが入る。その割に狭いし電源が少ない。なのでコンセントの奪い合い、場所取り、周りへの配慮…など、私もユンさんも他のスタイリストたちもてんてこ舞いだった。

そして、私たちEXOのチームはなんとか全員のスタイリングを終えて、私は今タオルを洗いに外のシンクに向かっているところだ。

……？

歌が聴こえる。
何となく興味を引かれて、声の方に足を進めた。外に設置されたシンクのすぐそばで誰かが歌っている。

ー綺麗な、声。

人の気配に気づいたのか歌が止まり、その人がこちらを振り向いた。

「ーあ、Aヌナ」

私の顔を見て、ほっとしたような笑みを浮かべた…チェンさん。

「練習ですか？」

私はシンクにタオルを置きながら、チェンさんに声を掛けた。

「はい、ちょっと緊張してきちゃって…先輩の歌で一番好きな歌いやすいものを」

恥ずかしいな、と少し顔を赤くして照れ笑いをする。

「チェンさんも緊張するんですね」

「しますよー、もう震えまくり」

「そうですか？全然見えないですよ、いつも堂々とした素敵な声で」

チェンさんは私の言葉を聞くと、そう見えて良かった、と笑う。なんだか淋しそうな笑顔…。

そしてそっと口を開いた。

「…ヌナ。俺…ここにいていいんですかね」