汚れた過去 ページ23
...
尊は塵になって消え、掛けたれた溶解液はAに届く前に空中で消えた。
『液体を操るのって、結構体力と精神力を使うんだよね。量によって扱う力が比例し、質によっては緊張感が比例する。...攻撃なら、命中率を気にして更に集中力が必要になる。』
『...だから、此んな石ころを素早く額に命中させるなんて、私にとっちゃ息をするよりも簡単なんだよ。』
『...有難うお母さん、お父さん、此処に導いてくれて。』
奇しくも此処は、中也とAが初めて出会った場所だった。
『んー!...喉渇くって此んな感覚だっけ。』
母「キャアアアアアアアアア!!!」
父「あああああああああああ!!!」
男「皮膚が!!皮膚があああ!!!!」
『お母...さん?お父...さ...ん?』
暫くして三人の大人は死んだ。
父は外科医だった。小さいながらもとても誇りに思っていた。
でも、救えない生命も勿論あった。
其の子は当時の私と同じ位の歳で、交通事故にあった。搬送された時にはもう手遅れだった。
父は関係無かった、だのに其の子の父親は医療失敗だと言い掛かりを付け家まで乗り込んできた。
男「お前の子供も彼奴の元へと送ってやる!!」
父「止めろ!!!」
男が持ち出したのはVXと云う、この世で最も悍ましい毒だった。
男「おらぁ!!」
母「いやああああ!!」
男が掛けてきたVXは一滴を除いて、私には届かなかった。其の一滴は、舌に落ちた。
残りの液体は凡て、私の手によって無意識に跳ね返されていた。
私の目の前には男、少し奥に母、もう少し奥に父が居た。
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
其の後の記憶は無い、でもあの時の事は鮮明に覚えている。
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作者名:ルナ | 作成日時:2023年5月14日 21時