【gnki】あの日々の中で、また夢を見る。【短編集】

Parallel.2-1「捻れた世界でも俺らは限界」 ページ5

 


おかしいな、とぐちつぼは首を傾げた。

俺は、確か20██年の日本に住んでいて、ごく一般的な……ストリーマー活動はしていたけれども、それでもまあ一般的な生活をしている、成人男性だったはずだ。そう考えて、再度目前の光景をよく観察する。

＿＿広いホール内に、黒に金の装飾が施されたフードを被る男たちが集まる。
中心には巨大な姿見、もとい鏡が置かれており、どういうことかその中には怪しげな仮面みたいなやつが映り込んでいる。無論、鏡の前には誰も立っていない。
張り詰めた空気は酷く息苦しいもので、思わずうげっと顔を顰めてしまった。

……間違いなく、現代日本ではありえない光景だ。何度目を擦っても相変わらず。
移動した覚えも何も無いのに、何故か俺はここに居る。
もっと言えば、ここで首を傾げる直前の記憶がストンと抜けている。断片的に残された記憶は、冷静に、かつ残酷に、置かれた状況を告げる。


「……成り変わり？」


微かな声は、入学式の喧騒に消える。




━━━━━━━━━━━━━━━




俺の名はぐちつぼ。イグニハイド寮に所属する一年生だ。
……いやまあ、言いたい事はわかる。何故俺がここにいるのかとか、この世界でこの名前だと違和感が無いかとか、そういう事だろ？

まず俺がここに居る理由。これについては残念ながら、これっぽっちも分かっていない。
元々日本で配信者として活動していたはずの俺が、えーと、なんだっけ？ツイステッドワンダーランド？に来たのは、本当に原因不明なのだ。
そもそも俺が日本に住んでいたことを知る奴もごく少数で、しかもその全員が俺と同じ状況なのだから、実質的には誰も知らないのが現状と言った所か。


 
 

Parallel.2-2「そこまで綺麗に分かれるか？」→←Another.2 「想うだけなら許してくれ」#

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す