【gnki】あの日々の中で、また夢を見る。【短編集】

Another.2 「想うだけなら許してくれ」# ページ4

 

ねねんねする話


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春の陽気に包まれる正午。
窓から差し込む光に目を細めながら、うつらうつらと船を漕ぐぐちつぼさん。ここ当分忙しかったようだし随分とお疲れなのだろう、目の下にクマ出来ちゃってるしな。

机に突っ伏して眠ろうとするその人の眼鏡を少し拝借して、丁寧に折りたたんで傍らに置いておいた。無くしたりしたら怖いし、まあなんというか、些細な優しさみたいなものだ。


小鳥の囀りさえ聞こえる静かな談話室。並べられた机に着いているのは私とぐちつぼさんだけ。
手持ち無沙汰に腕を彷徨わせるも、特にやることも何も無い。かといって離れるのもなんだか口惜しい。だって目前に端正な顔が無防備で寝ているんだ、少しくらいちょっかいしたっていいだろう。

音を立てないようにそっと立ち上がって、恐る恐る髪に触れる。
そういやいつだったかに「シャー芯みてえな髪の毛」って言われたってしょんぼりしてたっけ。確かに、その髪の毛は私とは比べ物にならないくらい硬くて。ちくちくする手触りが癖になりそうだった。


『……かっこいいなぁ』


本当に、綺麗な顔立ち。睫毛も長いし顔はちっさいし、寝ている姿さえ彫刻のような。胸が少し高鳴るのも仕方がないことだと思う。

……きっと叶わないとは分かっているけど、それでも。
この、顔が良くて人も良くて優しくて不器用な人が、私のそばに居てくれるなら。
それほど幸せな事はないだろうな。


『大好きですよ』


微かな声で呟いて、静かに席を離れる。
永遠に伝わらないこの心をまた閉じ込めて、今日もまた、いつも通りの時を過ごそう。
そうすれば、貴方も私も幸せなまま生きられるから。






「＿＿＿＿色々とズルいだろ、それは……」


実はひっそり起きていたぐちつぼが顔を真っ赤にしていた事は、Aの知らぬ話である。



 

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