続き ページ39
「はい着きました。やっとせいせいする」
「ちゃんと心拍数が0になるまでが人生ですよお嬢さん」
「うちのおじいちゃん0になっても一瞬戻ってきたんだけど」
「表記バグだったんじゃない」
伝わる人にしか伝わらない喩えで話ながら歩くと、やっと海辺に辿り着いた
思っていたよりも電車と海の道が短かった
「海だねー。死ぬ前に来れてよかった」
「これからはいつだって海を感じることが出来るよ」
「死んだら何も感じられるわけないじゃん」
「・・・・・・確かに」
コンクリートの突き出たところ
スッスッと自害の暗黙の礼儀のように靴を脱ぐ。一度家に帰って二人とも着替えたが、奴はお気に入りのローファーを変更することはなかった
「・・・・・・死ぬんだからその何か生意気なローファーめっちゃ踏んで良い?」
「駄目、やめろ。何でお前ローファーそんな好きじゃないんだよ」
「ちょっと鼻持ちならなくて・・・・・・」
「意味がわかんねえよ。とにかく私が死んでも駄目だからな」
「・・・・・・死人の口出し」
ああ、コイツ本気で死ぬんだな、と今更実感した
余所行きとも普通に行動する時用とも言える服装
それが、青と蒼の中で真っ正面に、絵のように立っている
あんだけ、死ぬ死ぬと言うだけだった奴が
「それじゃ。じゃあね」
非リア充らしく歯切れの悪い別れの挨拶
私は書き上げて纏めて留めた原稿用紙を意図的に落とし
今にも海へ倒れる寸前の奴を後ろへ引っ張った
「・・・・・・死ぬのは私が先ぞ」
大空と大海に向かってダイビング
死ぬときに似つかわしくない派手な音を立てて私は沈み始めた
靴も残さず、代わりに原稿用紙を形見に
シナリオがグズグズに崩れたが、まあ、第一目標は達成できそうだ
すぐに息が苦しくなる。
海水が入り込んで鼻から水が入り込み塩とキーンという痛みが同時に襲いかかってくる
ああ、これが今溺死しているということなんだな
シュンと気が遠くなったとき、またドボンと人が落ちる音がした。友人か、ライフセイバーか
ともかく私は命を終えたのであった
その後の事は死んでいたので、何もわからない。
このオチは便利だなと、最期の最後に考えた事がこれだった
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作者名:4696パーカー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/102620014/
作成日時:2015年3月7日 8時