月の下、星が瞬くテラスにて ページ14
もうすぐ理不尽な結婚が始まる
理不尽といっても何て事は無い、ただの政略結婚だ
跡継ぎの長男・・・弟が居る私の家は、当然のことながら勢力を維持するために私を嫁へやる
十六の頃から薄々察しはついていた
没落気味の家 傾きを直すには支えを持ってくるのが手っ取り早い。そういうことだ
「Aさま」
ふと、後ろから腹心の執事が見える。たしか、私の事を大層好いていたはずだった
私は彼を嫌いでは無かった
「もうすぐ行ってしまうのですか」
「ええ、そうね。貴方もわかりきっていた事でしょう」
とても悲しそうな顔を浮かべていた。それほど私の事が好きだったのだろう
今にも駆け落ちしたそうにしている。それぐらい運命に抗える力があれば良かったのに
「化粧道具も嫁入り道具も手入れしてあります」
いつもそこから私の支度をしてくれたわね
「貴方が選んだドレスも出来上がっています」
せめて日付が伸ばせるように、一等細かな細工をオーダーしたわね
「ブーケの花も、明日大輪を見せそうです」
スイートピーも入れておいたわ
「・・・・・・あ」
「ありがとう」
言いたげな口を手で塞ぎ、彼に見せたことの無いような笑みを浮かべた
綺麗に、笑えただろうか。それだけが気がかりだわ
「さようなら、元気にやってて頂戴」
何かを言う前に、私はそこから離れた
今日は酷く月と星が綺麗だった
彼が私を想う気持ちはこんなにも綺麗だったのだろうか
だけど、月明かりがあって良かった。きっと最後・・・最高の演出になっただろうから
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作者名:4696パーカー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/102620014/
作成日時:2015年3月7日 8時