いつかのあの日2

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篤人「影で人の悪口言って恥ずかしくないわけ？
あと、言っておくけどAさんは可哀想な人なんかじゃない。」



え？
聞こえてきた篤人くんの声は少し遠くからのもので慌てて涙をふき顔を上げるとさっきまで篤人くんがいた場所には誰もいなくて、もしかしてと階段を登って行くと篤人くんの背中がすぐ側にある。
そしてその背中の向こうには美穂と亜希、多分昨日言ってた一緒に来たという友達2人がこちらを向いて立っている

「…っ」

4人にとっては待っていた篤人くんのはずなのに先程の篤人くんからの言葉と後から出てきた私に驚いてか何も言わない4人。
篤人くん越しに美穂と亜希とは視線だけが交わる


「篤人…くん…？」
とりあえずこの場をなんとかしなければと篤人くんの背中に呼びかけると篤人くんが振り返って目があう
怒ってる？


篤人「Aさん、Aさんは可哀想なんかじゃないよ。
ドイツには逃げて来たけど俺とか結花さんに会えたから良かったって言ってたよね？
でも、またここで全部飲み込んで心の中にしまいこんだら後悔するよ。」


そう言う篤人くんの目はさっきまでの怒ったような目じゃなくていつもの優しい目で。
少し視線をずらすと4人とまた目が合ってとっさに逃げ出しそうになるのを踏みとどまる

思いっきり自分の手を握り締めて篤人くんの横を通り過ぎて美穂と亜希の目の前に立つ


美穂「...え、Aなんで？」

亜希「てか、うっちーとやっぱり知り合いなんじゃん。
嘘ついたの？」


他の2人は私と美穂と亜希と多分篤人くんの方を交互に見て何とも言えない気まずそうな顔をしている

「嘘ついたことは謝るね。
だけど、篤人くんだから紹介しなかったんじゃないよ。
多分紹介してって言われた相手が誠でも他の誰かでも断ってたと思う。
そういうことがみんなはあんまり好きじゃないの分かってるから。」

気が強い亜希の顔が強ばるのが見える

もう一度強く手を握り締めて大丈夫。と心の中で呟く


「あとね、私、病気にはなったけど可哀想なんかじゃないよ。
そりゃあの時は激痛で毎日気が遠くなるような思いしたけど。

自分じゃなくて良かったってそりゃそうだよね。
誰だって進んで病気になりたくないもん」


そう、病気になってからみんなに言われた可哀想って言葉も私じゃなくて良かったって言葉も当たり前だよね。
誰だってなりたくないよ。

でも病気にならなかったら、出逢えない人がいた
気がつかない思いがあった
知らない景色があった





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