いつかのあの日2

15.atsuto ページ17

atsuto side.

「…っくそ」
大切な時期に試合で着地の仕方が悪くて足をひねって途中で交代。
今日も練習は普段のものとは別メニュー
怪我なんていつものことだし焦ってもどうしようもないことは分かってる。

それに大怪我をした訳でもないから2試合くらい様子見をしたらまた出られるようにはなる
ただ、今の時期…


「…はぁー。」

俺なんかが少しでも出なかったらチームの居場所なんてすぐになくなる。
頑張って取り戻せばいいだけの話なのにどうも調子が上がらない


Aさんきっとニュース見てるだろうな…
Aさんにこんなかっこ悪いところ見せれなくてここ2、3日は家にも行けてない。
Aさんのご飯も食べれてないし練習終わりにこのモヤモヤを何とかしたくてあの公園に来てはぼーっとしてから帰るという繰り返し


真司とか日本の友達から心配の連絡が来るけどイライラして全部無視
麻也はそういう俺の性格を分かってるからかどうでもいい内容ばっかり送ってくるけど麻也だから全部無視

連絡が欲しいAさんはいまだに連絡先を聞けてないから連絡なんて来ないし。
いや、まぁ隣の家だから連絡先を知らなくても困ってなかったと言えば困ってなかったけど…


連絡が欲しい…？

「これじゃ本当に好きみたいじゃん…」


怪我のモヤモヤで頭を整理したくてこの公園に来たのに気が付けばAさんのことばっかりで自分にあきれる

ベンチに座ったままジャージのポケットに手を突っ込んで景色を見ながら自分の白い息を眺める

そういえばAさんを初めて見たのもこの公園だったな…
Aさんが俺を認識したのはきっと長谷部さんとのあの食事会の時なんだけど。


あの時Aさんはなんで泣いてたんだろう
あの時の俺も試合で上手くいかなくてモヤモヤしてこの公園に来て、いつもの定位置のこのベンチですっきりするまでぼーっとしようと思っていたら先約がここに居た。
しかも日本人っぽい女の子で…
てっきり自分のファンかと思ったらその子は泣いていて
でもその姿がきれいすぎて俺は息を飲んだんだ。

「…ふっ」
Aさんのことばっかりだな
自然と笑ってしまい自分らしくないなと思う

よかったこの場所があんまり人が来ない場所で。
チームメイトにこんな一人で笑ってるところなんて見られたらしばらくはからかわれる。



「篤人くん？」

暗くなってきたし体も冷えすぎると良くないから帰ろうかと思ったら不意に少し離れたところから声が聞こえてびっくりした。
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