その4 ページ6
「ん……きくん……岬君!」
「!」
眠っていた岬を起こしたのは、はじめだった。
ぬれタオルを片手にもち、心配そうな顔で岬を見ていた。
「どうしたの?すごくうなされてたけど」
「そ…そうだった?」
”夢だったのか”と岬は心でほっとしていた。まだ、起き上がれないため横のままの体制ではじめを見る。
あまりまじまじと見たことがないためか珍しく感じた。
前髪は茶色みがかかっていて、少し暗めのブラウンの瞳が岬を見る。そのなんとも言えない距離感に岬は心なしか顔を朱くする。
「岬君?」
「…あ……ごめん…」
顔を朱くしている自分を見せたくなく、岬は顔を下に向ける。
すると、さっきまでは気がつかなかったがはじめが自分の手を握っていることに気が付いた。
「っ…手、握っててくれたんだね…」
「ん?……あ…ごめん、手、冷たかったみたいだし…嫌だったね。ごめん」
そういって、手を離そうとすると、岬がそれを止めた。
「岬君?」
「……さっき、夢を見たんだ」
小さい声で、岬が話し始めた。
はじめはもう一度イスに座り直してその話を聞いた。
「真っ暗な世界で…女の子の後ろ姿を見つけて…呼ぼうとしたら…声が出なくて、その子は闇の中にとけ込んで…」
「…岬君」
「何回も呼ぼうとしたんだ…でも…」
その言葉を止めた。
はじめは、人差し指を岬の唇に当てる。
「…はじめ?」
「岬君。君は優しい人だよ…だから色々考え込んじゃってそんな夢を見ちゃうんだよ?」
「…で…でも…」
今度は、にっこり笑う。
「私が居るよ」
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作者名:佐倉雪 | 作成日時:2019年2月18日 15時