10話 前編 ページ18
通話の切れたスマホを握りしめ、液晶に表示された「桑原綾」の文字をじっと見つめていた。
綾は大丈夫と言っていたけれど、本当にそうだろか？また自分で自分の首を締めるようなマネをしていないだろうか？正直、綾の言う「大丈夫」ほど信用できない言葉は世の中そうそう見つからない。
綾に歌い手活動を勧めたのは俺。
それは周知の事実である。
半年ほど前──俺は大学3年生、綾は2年生に進級して少しした春。突然綾から俺に電話が掛かってきた。
『もしもし』
『あー……久しぶり、実』
『いやそれはいいけど。何？どうした？』
答えあぐねる綾の後ろから聞き慣れたバスの発車アナウンスが聞こえた気がして、思わず眉をひそめる。
本来綾が居るべき場所では決して聞こえないものだ。
『綾、今お前どこに居んの？』
語気を強めて尋ねれば、ややばつが悪そうに、小さな声で綾は『盛岡駅』とだけ答えた。つまり、岩手。
『……は？なんで！？大学は！？』
『うん、なんかこう、ふらっと来ちゃった』
『ふらっと？親御さんには言った？』
『……言ってない。バレたら怒られちゃうね』
『…………あ〜っ、もうこのバカ！！』
『迎えに行くから動くな』とだけ言って通話を切る。俺が綾を絶対に見捨てないことをわかっての行動なのだから小憎たらしい。上着を羽織り、財布とスマホだけ持って家を飛び出す──前に、台所に立つ母に『今から綾が来る』とだけ伝えておく。何度か遊びに来ているのですっかり母とは顔馴染みだし特に問題ない。
明確に言葉にされたわけではないが、親にバレたら叱られる、とは暗に「匿ってくれ」ということだろう。
電話が掛かってきたのが夕方だったのが幸いした。比較的バスの本数の多い時間帯だ。
渋滞に捕まってなかなか進まないバスに苛立ちを募らせながら、なんとか盛岡駅に辿り着く。ロータリーを見回してみれば、少し離れたベンチでぼーっと鳩の群れを眺めている綾が居た。服装は普段着で、持っている荷物はリュックサックひとつだけで、本当に大学からそのまま来たのだろう。
『綾』
近づいて、声をかける。
綾の足元に居た鳩たちは俺が近づいた途端にどこかへと飛んでいった。
『……実』
『ほら、行こう。母さんにも綾が来るって言ってあるから』
『……うん。ごめんね』
『いいよ、別に』
疲れきった顔で笑って、綾は俺の手を取った。
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すずしろ(プロフ) - (●?´▽?`●?)さん» 遅ればせながら、お誕生日おめでとうございます！はこたろーさんの絵、私も好きです！素敵ですよね。 (2020年11月7日 18時) (
レス) id: ec450513a5 (このIDを非表示/違反報告)
(●?´▽?`●?)(プロフ) - 夢主ちゃんの誕生日が全く一緒でびっくりしました……｡はこたろーさんの絵が大好きです!!これからも更新無理ないペースで頑張ってください!! (2020年10月20日 1時) (レス) id: 5e85bd0815 (このIDを非表示/違反報告)
すずしろ(プロフ) - 桜みさき@低浮上さん» 連投コメント全然大丈夫ですよー！(b･ω･)b 感想くださって本当に嬉しいです。ありがとうございます！！ (2020年8月22日 0時) (レス) id: ec450513a5 (このIDを非表示/違反報告)
桜みさき@低浮上(プロフ) - 毎回作戦会議しちゃういつメンも、かわいくてかわいくてほんとに好きです...ありがとうございます；； (2020年8月21日 15時) (レス) id: 94acc03127 (このIDを非表示/違反報告)
桜みさき@低浮上(プロフ) - コメ連投は迷惑かなぁと思って黙っているつもりだったんですけど、幕間でにこにこしすぎて口端が天井をぶち抜いたのでやっぱりさせてください...とても好きです...第三者視点っていいですよね；；気持ちにすぐに気づいちゃう本人もお兄ちゃんも、協力してあげたくて (2020年8月21日 15時) (レス) id: 94acc03127 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すずしろ | 作成日時：2020年7月27日 1時
