邂逅(2) ページ3
「あ…………」
限界を超えた恐怖に、腰が抜ける。声も出ない。
ドサリ、と尻餅をついた私を見て化け物は距離を詰めてくる。
もう駄目だ。私、死ぬんだ。
唸るような叫声を上げ、化け物の顔が近付く。
見たことのない程鋭い歯や爪に、ギュッと目を瞑る。
しかし、いくら待っても痛みはやって来ない。
恐る恐る目を開けると、目前に迫っていたはずの化け物の姿はなくなっていた。
かわりに私の目に映ったのは、白銀の髪をした男の人。右手には日本刀が握られている。
「あ、の………」
どうして、何、この人。なんで刀なんか。廃刀令は……?
「無事かィ」
刀についた血を振り払いつつ、その人は私に問う。
目力の強い目元に、傷のある顔。
低くて、そっけない声掛け。
怖いはずなのに、そんなことは全く気にならなかった。
だって、多分、この人があの化け物から私を助けてくれた人だから。
「あ、あの……お父さんと…お母さん、は…」
その人の言葉に何度も頷くと、私は尋ねた。
重傷だけど、生きている。
そんな言葉を何処かで待っていた。
しかし、現実とはあまりに非情で望んだことばかりが起こるわけではない。
むしろ期待とは真逆のことが起こることが多い。
それは今回も例外ではなく。
「残念だが、あれはもう無理だ。助からねェ」
彼の返答も、私の一縷の望みを打ち砕くには十分な無慈悲なものだった。
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作者名:薄氷 | 作成日時:2021年2月8日 20時