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「八左ヱ門!覚悟〜〜!」
「うぁああああっ⁈」
「涼しくなったか?尾浜勘右衛門からの夏の贈り物だ!」
「ただ水をぶっかけただけだろ?」

夏ももう終わりだというのにまだ蒸し暑いのは皆同じ。いきなり水かけ合戦が始まれば私は奥に引っ込んでしまう。


若いね。あんなにも笑顔で。
とてもじゃないけど一緒にできないよ。


そう思いながら私は襖を閉じた。
背後から声をかけられる。

「ーー貴方なら私を理解してくれていると思っていました」

なんでそう思ったの?

「ずっと側にいてくれたじゃないですか」

側になんていなかった。

「……卒業しても変わらないって」

当たり前でしょう。

「また一緒に話そうねって」

そうだよ。話そうよ。

「貴方だから好きになったのに」

ほら、変わってしまったのは貴方じゃない。
名もわからない、言葉遊びをしたかすら忘れてしまった忍者の卵に話しかける。

「ごめんね。今はまだ……」

これは誤魔化し。
だって本当のことを言ってしまってはいけない。

貴方は誰?だなんてそんなことを問いかけてはならない。
そう思うのと左頬に痛みが走るのはほぼ同時だった。




「どうしたの⁈」

叫び声に似た保健委員長の声が耳元で聞こえる。頬はまだ赤みを帯びているらしく、大丈夫かと問うてきた。
視線をそらす私に保健委員長は何を悟ったのか沈黙の後に諦めたように笑った。

「ああ、また」
「よく分かるね」
「分かりますよ。だってくノ一がいるとはいえ紅一点ですから」

想いが集中してしまうのも頷ける

そう言うといつも彼はこちらの様子を伺ってまた笑う。

「誰かしら恋人とか、想いびとでもつくってしまえば諦めもつくのに……」

誰かしら恋人とか想いびととか特別な関係は色々あるけれど彼らが本当に欲しているものはたった1つなのに。

「結局、満たされたいだけなんでしょう?……あ、いやらしい意味じゃなくてね」

忍たまの子たちも食堂のおばちゃんとか事務のおばちゃんとかシナ先生とか伝子さんとか誰かしらいるでしょうに。

「……忍びは闇に生きる者。でも何も感じない訳ではないんです。まだ忍びになれきれてない僕たちなら尚更」

ほら彼だって同じ。保健委員長は私の背中に手を回して痛いぐらいに抱きしめる。

「すみません。少しだけ」

だからなんで私なの。


瞼を閉じると虫を追いかけ回す彼が浮かんで少し笑えてしまった。

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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます!とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました!お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます! (2019年5月11日 16時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか?もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さえき | 作成日時:2018年8月18日 14時

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