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「私がこの事を言ったらどうなると思います?」
立花仙蔵は首を傾げ、私にいつもの興味深そうなものを見るかのような笑みを向けた。
「どういうことだ」
「貴方がこのままあの子のことを利用するなら私からあの子に全て話します」
其奴は驚きもしないでため息をついた。この人は今、何を考えているのだろう。
その物憂げな表情を見てくのたまのあの子は美しいと褒めていた。
美しいもんか腹の中でとんでもないことを企んでいそうな此奴が、貴方を利用している此奴が美しいわけがないじゃないか。
「黙ってないで何か言ってください。人間の愚図」
最後につけなくてもいい悪口を付け足して立花仙蔵の様子を伺う。いつもは眉をひそめることもしない此奴が今回は私を見て顔をしかめている。
何を考えている。何をしようとしている。
私を見て何を考えている。
くのたまのあの子は本当は何を考えているのか分からないところも秘密主義で美しいと褒めた。
こんな読めない男の何がいいのか。
「何か言ったらどうです」
立花仙蔵を睨みつける。暫しの沈黙の後、其奴はやっと口を開いた。
「……何を言っているんだ」
その口から何が飛び出すのか予想出来なかった。
「彼奴はこの事を知っているんだぞ」
彼の胸倉を掴む。だが私の力では顔が近づくだけで立花仙蔵は蹌踉めくこともなく、じっと私を見つめているだけだった。
「貴方、何とも思わないんですか」
「ああ」
「さいってい」
くノたまのあの子は全て知っていた。
それでも此奴を受け入れて愛していたのだ。
なら私に話していたことは?
嬉しいと言っていたのは?
「全部、嘘だったっていうの」
こんな奴を愛してしまったばっかりにあの子は傷つかなくても良かったことで傷ついている。
こんなの絶対許される筈がない。
絶対に許さない
貴方だけが救われていたなんて虫が良すぎる
貴方にも同じ目にあってもらわないと
傷を残してやりたい。
一生癒えることのない傷を今、此処で。
恋愛相談を聞いた時のあの子の表情は何処か影があったことに今頃気がついた。
何故気がつけなかったのか。
何故自分を傷つけるような選択をした彼女を怒れなかったのか。
私はそんな自分が嫌だった。
「私。貴方のこと、大好きですよ」
憎しみを隠した穏やかな笑顔を浮かべて諦めたようにそう呟いた。
「ほう」
その時、立花仙蔵は見たことのない表情をしていた。
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます!とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました!お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます! (2019年5月11日 16時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか?もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年8月18日 14時