成り代われなかった私と貴方 ページ31
「本当にそれで良かったの」
私にそう問いかけるのは全く同じ顔をした同室の不破雷蔵。正確には私が変装していると言うのが正しいのだが。
「ああ、もちろんだ」
雷蔵の私を見つめる瞳が悲しげに揺れる。そして一瞬真剣な表情を浮かべたかと思うと目を細め、口で弧を描き、首を傾げて私の顔を覗き込んだ。
「残酷だなあ。あの人を殺したのは他でもない三郎なのに」
「……任務だったんだ。仕方ないだろう」
負けの決まった戦。
そんなぼろっちい船に乗り込む奴なんて誰がいるのだろう、と嘲笑していた。賢い奴なら乗り込むふりをして逃げるのが普通だろう。でも彼奴は彼処にいた。馬鹿め、と呆れ半分でいられたのならどんなに楽だったか。私の愛した女の愛した男だと知らなかったらどんなに楽だったか。
「でもそこに個人的な感情はあったじゃないか」
柔らかに笑うわりに同室が言うことは中々手厳しい。それもそうか。雷蔵は長くいるだけあって私が表面上だけの慰めをよく思わないことを知っているからこそ、本音をぶつけてきてくれるのだ。普段からこれぐらいしっかりしてくれていれば優柔不断と言われないだろうに。
「三郎は不器用だね」
「あの女の愛した彼奴ほどではないさ」
彼奴は真っ直ぐで優しくて嘘のつけない奴だ。戦だって参加するのも嫌だったろうに逃げ出さずに最後まで戦い抜いていたじゃないか。まあ誰も殺したくないからと兵を見かける度に彼らがこちらに気がついていなくても逃げていたのは驚いたが。それで私に殺されてしまうだなんて本当にざまあない。
「……本当に馬鹿なやつ」
呟いた声は雷蔵に届いたのだろうか。
「うん。馬鹿だね。でも君はそれ以上の大馬鹿者だ」
「容赦ないなぁ。雷蔵は」
そう言うと彼は軽い笑い声を上げた後、急に押し黙って私の目を見た。
「そういえば三郎。あの人をした時に手元が狂ったでしょ。珍しいね」
何人も相手にして疲れてたの？
それとも動揺していたの？
でもそれにしては残酷な殺し方だったね。
雷蔵はちゃんと見ていたのか。
彼奴を殺した時にどっと流れ出してきたのは激しい後悔。感情的に振り上げてしまった赤に染まった刀を見て、思わず泣き崩れそうになるほどの罪悪感。
「……先に言っておくけど謝るべきなのは僕じゃないよ」
楽にもさせてくれないのが優しさなのだとしたら本当の優しさは果たしてどこにあるのか。
いつか私に愛した女の愛した男を殺した復讐を
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます！とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました！お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます！ (2019年5月11日 16時) (
レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか？もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さえき | 作成日時：2018年8月18日 14時
