☆ ページ29
それは私たちのもの。愛を誓い合ったあの人と私との間にできたもの。
あの人とそう呼ぼうと決めたもの。
「ああ……知っている」
知っていたの。まあ感の鋭い人なら気がついても可笑しくはないでしょう。すとんとしていたお腹にほのかな膨らみが出来たことは隠せるものじゃない。
そういえば貴方は少し太ったとかぬかしやがったわね。あの時から貴方のこと小生意気なクソガキだと思ってた。
「……あんたに恋人がいるなんて、思わなかったからな」
失礼な奴。それとその顔でその口調で話すのはやめてくれる？
あの人はとても優しくてそんな乱暴な話し方をしないもの。
ごめんなさい。話が逸れて。
貴方、こまどりについて本当に知らないの？
「知りませんよ」
そう。察しているくせに。
まあいいけど。深い話は私とあの人以外知らないから。
「はやく話してくださいよ。僕は貴方のことならなんだって知りたいんだ」
心にもないこと言わないでよ。……でも此処は賑やかで皆、周りのことなんて気にしていない。丁度良いから話してあげる。
「そんなに焦らさないで下さい」
慌てないで。時間はまだたっぷりあるんだから。日が暮れるまでには貴方は私とあの人の全てを知る。
「……私だって知りたかった」
素に戻ってる。まあ、今ぐらいは自然体でいいけど。
でも貴方はあの人として私の側にいることを選んだ。だからあの人と私について知ってほしい。
「知ってどうすればいい」
ただ知っていてほしいの。だって私たちに踏み込んできたのは他でもない貴方じゃない。私だってたった１人のことをずっと掠れることなく覚えられないから一緒にあの人のことについて覚えていてほしい。私のあの人の話をする時の話し相手になってほしい。
「それが私に側にいてほしいと頼んだ理由か」
ええ。初めから利用するつもりだった。
都合のいい役をあてがうつもりだった。
「私がああ言い出さなければどうしていたんだ」
他の誰かに頼んだかも。
「他の奴らが断ったら？」
貴方がいるじゃない。
「私が断ったら？」
それはない。
だって貴方、私のことが好きでしょう。
鉢屋三郎くん。
彼は目の前の甘味を食べる手を止めた。どうやら気がつかれてないと思っていたらしい。
図星を突かれて黙ってしまうなんてまだまだ子ども。
そして告げるのは私とあの人との叶わなかった物語。
いつかあの人に成りきれなかった彼に報いを。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「忍たま」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます！とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました！お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます！ (2019年5月11日 16時) (
レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか？もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さえき | 作成日時：2018年8月18日 14時
