☆ ページ27
貴方はあの人に成り代わる。
平気そうな顔で隣にいる私の心情なんて貴方は分かっているはずなのに何故やめないの。
貴方は天才だから。
妬ましい。妬ましい妬ましい。
その能力さえあればあの人に成り代わるのは私だったのに。今からでも貴方のことをぶち殺してやりたい。
「どうかしたの」
貴方はあの人になってから私に馴れ馴れしくなりましたね。
「すごい荷物だ。僕も手伝うよ」
貴方はあの人になってから私に優しくなりましたね。
「遅かったね。僕も人のことは言えないけど」
貴方はあの人になってから私の大好きな表情で大好きな声をあげて笑うようになりましたね。
ねぇ。どうして。
どうして此奴じゃなくてあの人なの。
「なんで」
「その質問には答えられない」
口調はあの人。なのに此奴は __
「鉢屋三郎」
その姿も貴方じゃなければ彼に戻る時も別の姿。
いっそのこと、何処かの柱にでも縛り付けてその仮面を貴方の皮ごとはいであげましょうか。それとも手首に釘を打ち付けて確実に動けなくしてから全てを見せてもらって私自らその心臓をお茶目に笑顔を浮かべながらえい、とついてあげましょうか。
「貴方のこと、本当に好き」
「そう。僕も君のことが好きだよ」
この人は私の名前を呼ばない。完全にあの人の呼び方で私の名前を呼ばれてしまったなら、私はきっと気が狂って彼を殺してしまう。
ああああ、貴方の所為で貴方の所為で。
「頭を撫でて」
「いいよ」
「抱き寄せて」
「勿論」
「もっと強く」
「こうかな」
「もっと」
「これくらいかな」
「そのまま、少しだけ」
「……ああ」
涙を流した。荷物が音を立てて落ちるのも気にせずに。
貴方は体格も声も髪質も何でこんなに同じにしたの。不破雷蔵の時にはこんなに同じにしなかったのに。体温まで同じじゃない。
「……熱い」
「君のこと、好きだから」
そんなこと、言わないでよ。
嘘でもそう言ってくれるそんなところ、本当に本当に嫌い。
「冗談言わないで」
「冗談なんかじゃない」
あの人なら生真面目にそう答えたでしょう。表情の作り方だってそっくりで貴方はあの人のことをどれだけ見ていたというの。私の方がよっぽど見ていたはずなのに。
嫉妬。この人が私よりもあの人を見ていたことに対する嫉妬。
貴方と私の境界線がぼやける。私の首筋をつつく髪の毛からは懐かしいあの人の匂いがした。
いつかあの人に成り代わった彼に報復を。
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます!とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました!お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます! (2019年5月11日 16時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか?もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年8月18日 14時