成り代わり糞野郎と ページ26
私の気持ちを分かっていながら嘲り、弄ぶ嫌な奴。
ねぇ。何で私は貴方に組み敷かれているの
じわじわと広がっていく嫌悪。「触らないで」と声をかけても彼は意地の悪い笑顔を浮かべるだけ。次に私の心に広がったのは苛立ち。それも体の何処かが焼かれているような激しい苛立ち。心の中で罵倒する言葉を探してもどれもこれも軽いような気がして、歯軋りするとその様子を見て彼は鼻で笑う。
じたばた暴れても彼は押さえつけてにやにや笑うだけでますます何もできない遣る瀬無さに怒りを募らす。
「何のつもり」
「何も糞もないでしょう」
つん、と大人ぶったような返事。
「……いい加減にして」
心の底から限界だった。その時の私は随分な癇癪を起こしていた。
「私の好きな人の顔で、そんなことしないで」
やめて。
貴方なんか大っ嫌い。嫌で嫌で仕方ない。顔をぶん殴ってやりたい。でも貴方には傷も痕も何もかもを消してしまうから、関係ないのかもしれないけれど。毒物のように最も耐えがたい種類の嫌悪。何で貴方が身近にいたのか。それが人生で一番の不幸。
「本当にそれでいいんですか」
「あの人はもういない。誰も骨を拾うことすら出来ないから」
「あの人に縋って生きて行くのは悪いことでしょうか」
「そんなの見っともないだけだから」
「いいじゃないですか。見っともなくても」
「そんなの耐えられない」
「私が、柳さんのそばにいます」
貴方はそう言うけれどね。私は貴方のことが大っ嫌いで嫉妬しているの。貴方の変装能力。私がそれを使いこなせればあの人になることも出来たのに。あの人と一つになって永遠に一緒にいることだってできるのに。
その顔が欲しい。
その能力が欲しい。
貴方の才能が欲しい。
ああああ、忌々しい。
大っ嫌い。貴方の内臓をかき出してやりたいぐらいに。いや、殺してやりたいほどに鬱陶しい。
こんな奴に嫉妬する自分すら嫌になってくる。
「鉢屋三郎」
にんまりと笑う彼を見て何とも不気味だと思った。彼の瞳は屍のように一筋の光もさしていない。本当に屍にしてやろうかと口にしてしまいそうになるのをぐっと飲み込んで私の本心と真逆の甘い言葉を囁く。
「ずっと、そばにいてね」
自分の心さえも溝に捨てて私が手に入れたものは死んで行くかのように重苦しい心だった。
いつか、あの人に成り代わろうとした彼に復讐を。
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます！とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました！お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます！ (2019年5月11日 16時) (
レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか？もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さえき | 作成日時：2018年8月18日 14時
