これからだった私と食満留三郎 ページ24
「よぉ、どうした」
彼、食満留三郎が顔を出す。何も言わずにいると夜も遅いからとにかく入れ、と言われて普通にお邪魔すると彼はため息をついて「仙蔵と小平太には言うなよ」と言う。首を縦に振ると安心したようにため息をついた。
「それで、どうした？」
彼は頬杖をついて私の顔を覗き込んでくる。
「こなきゃいけないと思って」
なんだそりゃ、と笑いながらも馬鹿にしないあたり、彼は人間が出来ているのだと思う。寒くはないか、とか怖いのか、とか心配してくる様子からするに何にも気がついていないのだろう。私の心境はなんのその布団を出し始めて私にかけてくれる。寒くなんてない、と言っても「お前に風邪を引かれては困る」と強引に押し付けられてしまった。
「……ありがとう」
「どういたしまして。それでどうしたんだ」
何があったわけでも何をしに来たわけでもない。ただ終わらせにきたのだ。
「留三郎はいつも私を心配してくれるね」
声が震えた。彼はぎょっとして慌て始める。その表情、私に何かあるとよくするね。
「どうした？辛いことでもあったのか？具合が悪いのか？」
「何でもないよ」
「何でもなくないだろ。泣いているじゃないか」
そこで私は自分が泣いていることを認めざるを得なくなった。流れる涙を拭いもせずに話そうとすると彼は袖で私の涙を拭う。
「泣くな」
泣くな、と言う方が無理な話だ。無責任、と吐きかけてもこの人が悲しそうな顔をするだけで。私はこの人を傷つけたいわけじゃない。だって何よりこの人が一番傷ついているのだから。
「留三郎」
「なんだよ」
「ごめんね」
気がついたら私の背中は床に引っ付いていた。上にはさっきまで隣にいたはずの彼がいて、流石に予想していなかったなぁとか妙に客観的に自分を見て考えていた。
「大っ嫌いだ。本当に心の底から」
「知ってた」
「お前をぐちゃぐちゃにしてやりたい」
「うん」
「なにより ーー」
「だめだよ」
最も言いたかった言葉は私が自身の唇で塞いだ。そして私も彼もお互いを嗤った。
このまま終わりだなんて認めない。
私も。勿論、みんなも。
「……すまない。留三郎」
それは貴方の同室の言葉で。
私は結局終わらせることは出来なかった。彼のいない世界で彼を待ち続けることを選んでしまったから。
いつまでも待っている。
登場人物が揃って物語が進むよう願って。
そう、一番いなくなるべき私が永遠に。
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます！とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました！お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます！ (2019年5月11日 16時) (
レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか？もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さえき | 作成日時：2018年8月18日 14時
